新NISA(少額投資非課税制度)普及に伴い個人投資家の裾野が広がり、株主優待への関心も高まっている。こうした中、日本証券業協会は昨年10月、株主優待に関する学術的な研究結果をもとに優待の意義や効果を検討する「株主優待の意義に関する研究会」を設置。今般、その報告書を公表した。
日本の株主優待は、1890年代に山陽鉄道が資金調達策として株主に無償で汽車に乗車させたことが始まりとされる。そこから近畿の鉄道圏で優待制度がつくられ、記録上では東武鉄道が最古となるようだ。
実施企業はデータをさかのぼることのできる1992年の251社(全上場企業の9.5%)に対し、2024年は1,494社(同33.3%)と、上場企業の3社に1社が取り入れている。
効果として①株主数の増加②ボラティリティの低下③PERの上昇――が挙がる。表の通り、優待制度の有無と株主数の関係を見ると、「アリ」企業の株主数は「ナシ」企業の2倍以上。ボラティリティは「アリ」企業の方が低い。投資家の多くは低ボラティリティ銘柄を選好する傾向があることから、ボラティリティが低下するほど潜在的株主は拡大する。
PERも「アリ」企業はプライム14.7倍(ナシは14倍)、スタンダード13.3倍(同11倍)、グロース18.2倍(同15.6倍)と「ナシ」企業より高い。また、優待導入・廃止発表後の株価動向(TOPIXに対する相対パフォーマンス)を見ると、導入企業と廃止企業では2割程度のバリュエーションの違いがあった。
アカデミックな視点から優待導入・廃止の株価関係を検証しても、優待を導入すると株価が上昇するという結果が出た。「導入したときのみ株価上昇するのでは」と思われがちだが、パフォーマンスは上がったまま。
優待コストは配当や自社株買いに比して圧倒的に低く、にもかかわらず「株主基盤の強化」に効く。研究会報告を詳しくお知りになりたい方は日証協のホームページ<https://www.jsda.or.jp/>にアクセスを。