イーディーピー(7794)が6月27日、グロースに新規上場する。
合成ダイヤモンドに必須の原料である「種結晶」が主力製品。売上高全体の9割超(今3月期計画)を宝飾品向けが占め、インド、イスラエル、米国などグローバルに事業を展開している。
種結晶を製造できる企業は数少なく、中でも同社は大型で純度の高い結晶を大量かつ安価に製造することができる。近年は人工宝石市場で大型宝石の出荷が活発となっており、同社においてもユーザーの要望により種結晶の大型化が進展している。
なお、同社の生産技術は国立研究開発法人の産業技術総合研究所(産総研)が開発した手法を元にし開発したもので、基本技術の知的財産権は産総研が有する。同社は“産総研発ベンチャー”としてこれら知的財産権の独占実施権を有し、販売した製品金額から算出した実施料を産総研に納入している。
種結晶は長期的な受注となるよう交渉を行っている。要求量の多いユーザーには①半年以上の発注②今後の設備計画の開示――を要請することで安定した売り上げ計上を可能としているほか、有力なユーザー数社との関係性が非常に強くなっている。
そのため、多くの企業がコロナ禍で打撃を受けたが、同社事業には大きな問題も発生せず、順調に売り上げを伸ばしている。旅行などの出費が少なくなった分、これを物品の購入に回す動きがあり、人工宝石市場が拡大したことで同社の種結晶ビジネスは一層活況に。ユーザー各社から強い引き合いがあった。
種結晶については順次生産効率を高めており、前期においては出荷数、売上高ともに過去最高を記録した。今年10月末には新工場が稼働開始予定であり、これにより今期の生産能力の1カ月当たり平均の計画値は前期比で30.4%増加する見込み。
また、今期中に加工技術や宝石市場の知見を持つパートナー企業の選定を進め、新たに原石の供給ビジネスを開始する方針。まずは少量のテスト的な販売を考えており、今期は宝石原石で2,000万円の売上高を見込んでいる。
宝飾品向けのほか、半導体用の基盤やウエハ、高発熱のデバイスを冷やすためのヒートシンク、光学特性を活かした光学部品などの製品も製造・販売している。ウエハについてはまだ市場ができていないものの、研究開発用に各国の研究機関や企業に販売している。また、光学部品では5Gなどの先端通信分野でダイヤモンドの利用が進んでいるほか、検査機器で使用するX線発生装置の小型化に伴うX線用窓の量産の動きなどもある。(SS)
概要
●事業内容=単結晶ダイヤモンドとその関連素材の製造・販売・開発
●本社=大阪府豊中市上新田4-6-3
●代表者=藤森直治代表取締役社長
●設立=2009年9月
●上場前資本金=4億9,742万円
●発行済み株式数=254万5,300株(上場時)
●筆頭株主=藤森直治(上場前11.85%)
●公募株式数=36万株
●売出株式数=6万9,000株(ほかにオーバーアロットメントで6万4,300株)
●仮条件=6月9日に決定
●ブックビル期間=6月10日から16日まで
●引受証券=SMBC日興(主幹事)、SBI、丸三、野村、楽天、マネックス、大和、岡三
業績推移(単体)
売上高 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2021.3 | 1,139 | 270 | 131.54 | ― |
2022.3 | 1,562 | 527 | 174.13 | ― |
2023.3(予) | 2,415 | 737 | 197.47 | ― |
※単位100万円、1株利益は円 |