日本証券新聞は今年、創業80周年を迎えた。くしくも日経平均株価が最高値を更新するなど、日本市場も新しい時代に入った。時代の流れをどう捉えればよいのか。新紙幣発行の節目の年に、渋沢栄一の子孫(やしゃご)として注目されているコモンズ投信の渋澤健会長に話を聞いた。
――新紙幣の1万円札に渋沢栄一が起用された。
実業家の渋沢が入ったことで、「学問は大切だが実践することが大事」とのメッセージが入っているとみている。20年ごとに紙幣は変わり、時代の刻みを感じ取ることができる。20年後はキャッシュレスになり、今回が最後の紙幣かもしれない。新しい時代に入った心の切り替えとも思う。
――日経平均株価が最高値更新など新しい時代に入っている。
過去40年の中で今ほどワクワクしているときはない。私は政府の新しい資本主義実現会議のメンバーだが、昭和時代の成功体験が終わり、これから新しい時代に入るということがかなり明確に描かれている。例えばNISA(少額投資非課税制度)の改革で、増額、恒久化につながったのは画期的なこと。今まで投資に無関心だった若い世代が入ってきている。
また、新しい資本主義では外部不経済を資本主義に取り込もうとしている。環境や社会課題を資本主義に取り込もうということ。それが持続可能な社会になる。これは渋沢栄一が100年以上前に「論語と算盤」で提唱したことで、みんなが豊かになり、何かを取り残してはならないということだ。
――コモンズ投信のファンド「コモンズ30」も今年、15周年の節目の年となった。
非常に感慨深い。15年前はリーマン・ショックの時で、日本株式に長期的に投資しようとか、コツコツ積立投資をしようという考えはほぼなかった。さわかみ投信の澤上篤人さんがその道をつくったが、業界全体で見ると端っこの存在だった。それに加えてコモンズ投信は世代を超える投資を掲げ、そのためには金銭的なリターンも必要だが一部を社会に還元することも必要と、信託報酬の1%を使って社会起業家を応援した。そんなことをする運用会社は私の知る限り日本になかった。
今となると、日本株式投資、長期投資、コツコツ積み立て、社会への還元というのは当たり前。端っこにいたのが、15年たって時代が動いて気づいたらど真ん中にいた。ただ、われわれは常にエッジ(端っこ)に立っていなければならない。
一つのエッジがインパクト投資という概念。新しい資本主義でも出ていて、経済的リターンを求めるとともに、環境、社会課題を解決するという意図で、目標を設定して、きちんと(効果を)測定しなければならない。かんぽ生命とともに上場企業を投資対象とした「コモンズ・インパクトファンド」を作っている。コモンズ投信の創業者の一人として考えているのは、やることはブレないこと。長期投資、世代を超える投資で、常にエッジを立ててないとならない。
――コモンズ30は好成績だ。
価値をつくってくれるのは企業であるし、コツコツ投資している受益者、われわれはお仲間と言っているが、われわれは会社と長期的、アクティブに対話しながら、どのように会社が価値を高めているかをお仲間の皆さんと共有しており、その結果が今の実績だと思う。コモンズ投信のコモンにはいろいろな意味があるが、その一つはコンセンサス、当たり前のことを当たり前にやるということ。
――日本証券新聞80周年にあたってのメッセージを。
おめでとうございます。戦時中に始まり、厳しい状況のなか、きちんとした情報を読者に届けたいという思いがあっただろう。その後、日本はバブルに向けて奇跡といわれる成長をし、失われた30年があり、また、現在最高値となっている。人口動態が大激変するなか、世界に向けて新しい価値を作る会社が大切で、良い株主が支える。今後10年、20年……80年と価値創造に注目することは変わらない。(日本証券新聞も)これからの80年の活躍を期待している。(HS)