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インタビュー2024年11月28日

櫻井英明の<愛アール>注目企業トップに聞く 第8回 ネクセラファーマ

日本から世界にイノベーションを

エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビュー。今回はネクセラファーマ(4565・P)の野村広之進CFO(最高財務責任者)。六本木にある本社に伺ってお話を伺った。

同社の旧社名はそーせい。今年4月に「ネクセラファーマ」に社名変更した。「次の(Next)時代(Era)に挑戦するバイオベンチャーという意味を含んだ社名だ。バイオベンチャーの老舗であり、先駆者。「命を支えること。それが私たちの使命です。画期的な医薬品をいち早く届ける」ことをミッションとして日々成長している。キーワードは「新たなブレイクスルーを求めて」。最新のテクノロジーにより、「日本から世界にイノベーションを届け、日本発の国際的なリーディングバイオ企業となる」がビジョンだ。「患者さまやそのご家族、全ての医療従事者への貢献を、第一の使命とします」という一言に同社の意気込みが表明されている。

――GPCR(Gタンパク質共役受容体)とは。
細胞表面に存在するタンパク質です。細胞外物質を認識し、細胞膜を介してシグナルを伝達するセンサーの役割を果たします。GPCRは最大の創薬ターゲットで、米FDA(食品医薬品局)が承認した医薬品のおよそ3分の1がGPCRを標的としている。対象疾患は神経、消化器系、がん、代謝性、心血管、呼吸器系などの疾患です。全体で約800の創薬機会 (潜在的に約400個の創薬ターゲットとなるGPCRが存在)しています。当社はGPCRを良く知ることで選択性が上がり、有効性を高め、副作用を最小化できるという精密なGPCRモデルにより優れた創薬が可能になっています。当社はGPCRに特に注力し、375以上の分子構造を解明。中枢神経、消化器、免疫などの分野で30以上のプログラムが進行中です。

――製品について教えてください。
当社主力の自社製品「ピヴラッツ」は市場に急速に普及。日々患者さんの命を救っていますし、脳血管攣縮(れんしゅく)の予防における標準治療薬となりつつあります。自社パイプラインの「クービビック」は2024年9月に製造販売承認を取得。ベストインクラスの薬剤を目指します。不眠症治療の新たなニーズに応えることができるようになります。また、ビジネスモデルも変更し塩野義製薬さんが日本国内の販売、流通を単独で担うことになり自社のコストなしに市場全体からロイヤリティ収入を得ることが可能になります。

――グローバルの大手製薬との豊富な取引実績がありますね。
既存のライセンス先からの収入により、自社での再投資と成長加速を実現しています。15年以降の累計では当社は3,843社中5位にランキングされています。これまでに数百億円を受領。さらに今後も数千億円の収益が得られる可能性があります。最近では、ベーリンガーインゲルハイム社とライセンスオプション権を含む契約を提携しました。

――財務面では「コア営業利益」を導入されました。
コア営業利益は22年より算出し開示している新しい主要財務指標です。事業の潜在的な経常キャッシュ創出能力を示します。 コア営業利益は営業利益(IFRS)+重要な非現金支出費用+重要な一時的支出費用で定義されます。重要な非現金支出費用には、減価償却費、無形資産の償却費、株式報酬費用、減損損失などが含まれます。重要な一時的支出費用には、構造改革費用やその他の重要な一時的項目が含まれます。つまりコア営業利益=現金利益+重要な一時的支出費用と言うことになります。当社グループビジネスの実態により近い財務指標です。

――今期の目標の進捗について教えてください。
主な目標は以下になります。
(1)「ピヴラッツ」の売上高160億円以上(薬価ベース)、(2)「ダリドレキサント」の日本での承認取得、(3)日本とAPAC(中国を除く)市場向けに、1品目以上の後期開発品の取得もしくは導入、(4)1つ以上の価値の高い提携契約の締結、自社による第Ⅰ相試験を1つ以上開始、(5)新ブランドコンセプト、効率性、拡張性のためのシステム・アプリケーションなどのPMI投資を実施。順調に推移しています。

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