TOP  NSJアップデート  インタビュー  <特別対談> 経済アナリスト馬渕磨理子氏×日総工産(6569)清水竜一社長 ~後編~
インタビュー2021年12月2日

<特別対談> 経済アナリスト馬渕磨理子氏×日総工産(6569)清水竜一社長 ~後編~

AI装置はプロトタイプ完成、新規事業も「準備着々」

製造派遣・請負など製造系人材サービスを展開する日総工産(6569)。代表取締役社長執行役員兼CEOの清水竜一氏への、経済アナリストの馬渕磨理子氏によるインタビューの後編。

―御社の業績は、在籍されている方の人数と、彼らの付加価値を高めて一人当たりの売上高を上げていくという「掛け算」で作られているとのこと。足元では採用が順調だ。
テレビCMの効果が出ている。今期は採用人数を月1,000名という目標を掲げていたが、コロナ禍による外出自粛などの影響から750名ほどでとどまっていた。しかし10月より全国的にプロモーションを展開したところ、11月は900名程度と一気に拡大。特に自社の採用サイトからの流入が非常に増えており、結果、コストも低く抑えられている。

――付加価値については、どうか。
専門の研修を積んだ「技能社員」「エンジニア」も順調に増えている。特にエンジニアへの対応は後発ということもあり、競合企業では既にスキルを持った人材を投入するのに対して、当社は一から育てるなど人材への手間を惜しまない。

――離職率も低い。
2022年3月期第2四半期は3.8%と、4%未満とする目標をクリアできている。長く働くことのインセンティブが働く仕組み作りはもちろん、例えば入職したての方が環境の変化を不安に感じたりしないようケアをしっかりしていることも大きい。

――新規事業について聞きたい。いくつか進展があったようだ。
昨年9月に資本業務提携をした会社から技術を借りて、AIを搭載した装置とわれわれの人材とをセットにして提供するチャレンジを始めており、顧客メーカー数社とプロトモデルを完成させた段階。製造現場は慢性的な人手不足に加えてコロナ禍が自動化・省人化といったニーズに拍車を掛けた。いよいよ日本でもAI導入の動きが本格化してきたものの、肝心のデータが不足する中で、複数の製造現場を横断的に知る当社が保有する人材とノウハウが役立つ。

――8月には半導体関連企業を買収した。
当社は投資家の方から「自動車に強い」と思われているようだが、電子部品や半導体も決して“弱い”わけではない。ただ、買収したベクトル伸和は半導体の製造装置や計測器メーカーなどと取引があり、ここは当社が取引口座をもっていないメーカーだ。新たなアカウント企業を開拓するなど事業の柱として育成していく。

――「アカウント企業」とは何か。
われわれの造語で「重要顧客」のこと。定義は2つ。手掛けている製品群に強い競争力があり、これからの成長が期待される企業であることと、もうひとつは「人脈の強さ」。製造現場を統括している経営層の方にわれわれが直接ご提案ができる関係性が築けていることだ。当社は人材を中長期にわたって育てていくため、顧客メーカーの人事戦略の中にしっかり組み込んでいただく必要がある。

――具体的にどんな企業があるのか?
日本最大手自動車メーカーのグループ、コンデンサなど電子部品で世界トップクラス企業のグループ、メモリ製造メーカーのグループ、複合機メーカーのグループと、現在は4グループをアカウント企業と定義している。当社は700社近い大手メーカーとの取引があり、そのうちの50社程度にあたる。

アカウント企業に配属する人材の数と質を上げて、アカウント企業内での当社の「シェアを高める」ことと、ほかの会社についても常に生産状況をヒアリングしたり人脈を強化しながら「アカウント企業の数を増やす」ことが、当社の経営戦略の柱。

対談の様子は動画でもご視聴いただけます
https://www.nsjournal.jp/nsj_library/nisso-6569/