1986年創業、居住用不動産賃貸業を手掛ける老舗マリオン(3494・S)が“変わった”。6月、7月と連続して個人投資家向けイベントでプレゼンテーションを行うなど、福田敬司社長は「これまでほとんどゼロ状態だったIR活動を積極化させる」と語る。投資家はどのように受け止めたらよいのか? 代表として“相場の福の神”こと藤本誠之氏が、福田社長に聞いた。
――どのような会社で、どう成長していくのか。そんな基本の前に、まず「創業の経緯」から。非常にユニークだ。
本社のあるここ東京四谷の地で先代、先々代が賃貸業をやっていた。私は三代目。ただし祖業は割烹旅館で、付近にいわゆるキー局、大手テレビ局が2社あり、局員や芸能人たちが朝方まで打合せをして、そのまま仮眠、再び仕事に向かうといった使い方もされていた。今でも古くからのタクシー運転手さんの中には「ホテル本陣」をご存知の方もいる。
――現在の不動産賃貸業についても「利用者」に特徴があるとか?
物件は札幌から博多まで主だった都市に保有しているが、東京都心については借主に大きな特徴がある。都道府県など自治体と契約して職員の東京宿舎として、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなど家電を備えた状態で提供している。
――借主を絞るメリットは?
退去後に次に入る職員に、問題が発生しないようにと使用状況が常に良好であること、料金を一括前払いしていただくことが多いことなどがある。逆に居住者のメリットとしては「足」が用意されていること。四谷界隈の宿舎と、霞ヶ関など省庁とをシャトルバスで循環させていて、例えば要人の来日時でも進入禁止となるエリアにてマリオンのバスだけは車寄せまで入れてくれる程に信頼されている。
――事業について。コロナ禍で日本の居住用不動産への注目度が高まっていると聞く。
世界の中央銀行が金融緩和から引き締めへと転じた中、日本は唯一、緩和を続けている。その結果円安となり、外資の需要を強く感じている。
――円安が進み不動産価格は、外資にしてみればコロナ前後で3割ほども違う。日本は大バーゲン・セール状態。関係者は「まだまだ上がる」との見方が多勢だ。
外資の買いは今に始まったことではない。不動産にはサイクルがある。かつてのような暴落もあるだろう。ただ、不動産の価値は下がっても、当社が手掛ける賃貸の料金はそれ程変わらない。賃料が3分の1になるような極端なことは起きない。
――だとすると(価格が下がってもインカムは変わらないので)利回りが高くなり、日本の投資家にはチャンスだ。不動産市況がどうなろうと投資家リスク回避の為に、マリオンは個人投資家に向けて、不動産への「新たなアプローチ」を提供している。
現在は「i-Bond(アイボンド)」という商品を提供している。一般の投資家から資金を募り不動産を取得、運用は30年超の実績を持つマリオンが行い、経費を差し引いたうえで、賃料収入などの利益を皆さんにお配りする。1万円から利用が可能、24時間365日いつでも入出金の受付が可能といったフレキシブルさが、他社にはない特徴だ。「お金第3の置き場」として、第1の置き場である預貯金に対する「不満」と、第2の置き場である株式への「不安」を解消するツールとして多くの方に“頼って”いただきたい。
――「i-Bond」の成長余地は?
既にインターネット上で手続きなどは完結できるのだが、今後はトークンに置き換えて譲渡が自由にできるようになれば、もっと手軽に利用していただける。ちなみに「i-Bond」の分配金は賃料のみだが、法律上の共同事業者として所有不動産を市場売却する場合、今後は売却益も得られるよう計画していく。
――所有不動産といえば、ここ本社はどうか?
築40年。新耐震基準には当然、合致しておらず、靖国通りという緊急避難道路に面していることもあり、国から建て替えを奨励されている。給付金等も使って現在の14階から、近隣を巻き込んだ開発ができれば高層も計画できる。
――含み資産が評価されていないのか、株価が非常に低迷している。
現在の株価はPBR0.3~0.4倍台にとどまっている。確かに賃貸業だけでは成長戦略が描きづらく、当社はこれまでIRは“手付かず”だった。しかし今後は個人投資家の方に向けて「i-Bond」の優位性、当社のポテンシャルを知っていただく活動を強化していく。