低コスト競争には加わらず
なかのアセットマネジメントを設立した中野晴啓氏。日本株と海外株のアクティブファンドを1本ずつでスタートする予定。なぜアクティブファンドなのか。長期投資の理念をどう生かすのか。
――新会社の運用方針は。
中野氏 商品設計はこれから具体的にするが、会社自体を本格的なアクティブハウス(アクティブ運用会社)にしていきたい。セゾン投信とはイメージが違うし、時代の変化に適合させないといけない。これからインデックスがあふれてコモディティ化し、間違いなく本格的なアクティブ運用は世の中に希求されるようになる。そこに先んじて高品質なアクティブ運用を備えたい。まっとうなアクティブ運用が健全に競争し合う投資信託の世界を作ることが日本の資産運用が高度化する大前提だ。
――長期的にアクティブ運用がインデックス運用に勝つのは大変ではないか。
中野氏 インデックスを否定しているわけではない。合理的な手法で、相応のリターンは上がっていく。だが、資産運用業の本分は価格発見機能や銘柄選択で、魅力的な企業、ビジネスモデルを選別して世の中に見える化する。そういった会社に産業資本を提供する。これはアクティブ運用しかあり得ない。資産運用業者としての社会的本分を徹底的に果たすことが、日本が将来、金融立国として豊かになるために不可欠だと思っている。金融庁も大手の運用会社にグローバルの自前の運用機能を強化するよう要望している。ただ、それ以前の問題として、自国の資本市場に長い時間まっとうに評価されている日本株のアクティブファンドがどれだけあるか。長期目線で育てていくことを業界挙げてやらないといけない。
――そういっても、これまで評判の良かったアクティブファンドでも、近年成績が悪いところもある。理念は立派だが長期にわたる実現は大変では。
中野氏 それは事実だが途中経過でもある。ここしばらく調子が悪くても未来永劫そうであるかは分からない。何より大事なのは個性的かどうか。その会社が標榜している自分たちの強みを分かりやすく体現して、一貫して運用方針を続けていけるかが大事だ。同時に長期にわたって成長する力と、それをグリップする経営力がある会社を選別してポートフォリオを組むファンドを作りたい。それができないファンドが多い。米国では長期できっちり評価され、存続しているアクティブファンドはいくつもある。新しいNISA(少額投資非課税制度)が来年から始まるが、日本の運用会社がそうしたアクティブファンドを提供する本格的な日本株アクティブ元年になればいいと思っている。
――海外株ファンドはどういったものか。
中野氏 詳しくはできていないが、スタート時に自前で運用するのは難しいので、ファンド・オブ・ファンズ(他の複数の投信へ投資するファンド)やマルチマネージャー(1つのファンドを複数のファンドマネージャーが運用)で海外のマネージャーと組み合わせてやっていくと思う。僕自身が多くの生活者において欲しいのは世界の経済成長。合理的な運用の場所だと思う。日本株にこだわりを持ってほしいとは別の概念だ。
――新しい会社のファンドでコストを抑えるのは大変ではないか。
中野氏 どこまでコストを下げられるかはあるが、今、業界全体でインデックスファンドを中心に起きている低コスト競争は、我々の価値観の埒外(らちがい)。必要なコストを堂々と頂かないとならない。極端な安売りをする風潮のアンチテーゼになりたい。
――個別株投資はどう思うか。
中野氏 一般的に長期で合理的な資産形成は個別株運用と分けて、それにふさわしい投信を活用してほしい。ただ、自分がほれ込んだ、ずっと支えたい株式を保有し続けることも立派な長期投資だ。(HS)