コロナ禍でも業績は安定
ベース(4481・2部)はソフトウエアの受託開発を行い、「システム開発」「ERPソリューション」「その他ソリューション」の3つのサービスを提供。主要顧客である富士通グループ、みずほ証券、野村総合研究所の上位3グループに対する売上高が大半を占める。12月16日に新規上場から1年を迎える。これまでの歩みを振り返るとともに今後の展望について中山克成代表取締役社長に聞いた。
――上場から1年を振り返って。
「従業員の士気が一層高まったことは上場して良かったことの1つ。会社全体の活性化につながっている。また、知名度や信用度が向上し、採用も以前に比べてやりやすくなった」
――事業環境はいかがでしょうか。
「業界全体としては、航空業やホテル業などコロナの打撃を直接受けた一部の業界でIT投資の縮小や延期、中止の動きが見られる。こうした業界を顧客にプライム(元請け)案件を手掛ける企業は影響が大きかったのではないか。一方、当社が主要顧客とする大手SIer(SI事業者)は全体ボリュームが大きいため、当社にとって影響はそれほど大きくない」
「菅総理に変わったことを契機に、IT投資を強力に推進する機運が日本全体で高まってきたと感じている。『デジタル庁』の新設など、目玉政策としてIT投資を国が後押しすることは業界にとって大きな追い風となる。当社は受託開発会社であり、“モノづくり”と“運用保守”に集中している。各社がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することで、当社の仕事もどんどん増えていく。業界全体としてはコロナの影響によるダウンサイド、政府主導によるDX推進を目的としたIT投資拡大のアップサイドの両面が混在するが、中長期的には徐々に明るい方向に向いていくだろう」
――御社の強み、特徴を聞かせてください。
「日中混成の人員構成が特徴的。創業以来、日本人:中国人=1:1の均衡を意識しながら、お互いが尊重しあえる文化づくりを心掛けてきた。品質へのこだわりやサービス精神を持つ日本人と、新技術への探求心や上昇志向が強い中国人の双方の長所をうまく融合し、一体となって相乗効果を発揮していることが強みの1つ」
「IT業界は技術者不足が深刻だ。当社は日中両方から人材を確保でき、他社に比べて2倍の採用力がある点に優位性がある。また、業界平均に比べて販管費率が低い。人員の95%がSEと、無駄なコストがなく筋肉質な体制となっており、高い利益率を実現している」
“利益成長重視”の姿勢変わらず
――業績と事業の進捗について。
「今12月期第3四半期(1~9月)決算は計画を上回る着地となり、これに伴い、通期の業績予想を売上高119億5,500万円(前期比23.1%増)、営業利益22億9,100万円(同36.4%増)へと上方修正した。大手SIerを主要顧客とし、密なコミュニケーション、信頼関係を築いてきたため、コロナ禍の中でも業績は比較的良い形で推移している。中国子会社へのコロナの影響は7~9月期以降ほとんどない。早期の“東証1部昇格”を目指す中で、①信頼関係をさらに深め、既存顧客の深耕を図る②技術者の採用およびスキルアップ――を来期以降の成長に向けた重要課題として位置付けている」
――中期の成長イメージを教えてください。
「受託開発という地味なビジネスだが、高収益かつ高成長を実現し続ける仕組みが既に出来上がっている。営業利益率15%程度を維持しつつ、20%超の成長を長期にわたり継続することで、配当性向30%を目安に安定配当を続けていく」
「最先端の技術力と高い品質を提供し、将来はあらゆるITサービスのベース(根幹)となる“モノづくり”と“運用保守”の部分をすべて任せてもらえる存在となることを目指す。そのためには事業規模のさらなる拡大と生産性の向上が不可欠。提携やM&Aについても良い案件があれば積極的に取り組んでいきたい」
企業名:ベース
事業概要:受託開発を中心としたソフトウエア開発サービスの提供など
上場日:2019/12/16
初値:9,050円(1対3株式分割前)