「富裕層データ+新サービス」で成長
収益用不動産サービス始動へ
ランディックス(2981・東マ)は富裕層をメインターゲットに、不動産売買・仲介、住宅用地販売後のオーダーメイド住宅のマッチングサービスを行っている。昨年12月19日に新規上場から1年を迎えた。これまでの歩みを振り返るとともに今後の展望について岡田和也代表取締役社長に聞いた。
――上場から1年を振り返って。
「かねてデジタル化の遅れが指摘されてきた不動産業界。不動産テックのトップランナー企業としての地位をいち早く確立し、レガシーと言われる業界を変えていきたいという思いがある。そのためには資金力や知名度の強化が必要と考え、上場に至った。顧客数の増加や採用力が高まった点は上場の効果を実感している」
――事業環境はいかがでしょうか。
「在宅時間の増加が住環境を見直すきっかけとなり、戸建て住宅へのニーズが高まっている。メディアなどで都心から郊外への転出が進んでいるという話を聞くが、当社においては特段このような動きはない。東京23区の中でも富裕層の多い城南エリアを主戦場としていることもあってか、この辺りは世間の流れと少し異なるようだ」
――御社の強み、特徴は。
「リテンション(既存顧客維持)が一番の強み。成約の4割超が紹介・リピート・口コミから成り立っている。当社は約1万8,000件(昨年12月末時点) の富裕層顧客データを蓄積しているが、獲得ハードルが高い富裕層のデータをこれだけ保有している不動産会社はほかにないのではないか。 最大の競合優位性だと考える」
「顧客との関係性が強く、なおかつそれをデータとして蓄積しているため次のビジネスにつながりやすい。データをもとに、富裕層が求める商品を開発すればそのまま既存顧客にクロスセルすることが可能。例えば、当社で住宅用不動産を購入いただいた顧客向けに新たに収益用不動産の販売を始めるが、この際にも高いコストをかけて新規顧客を開拓する必要がなく営業効率が良い」
――業績と事業の進捗について。
「2021年3月期第2四半期(昨年4~9月)決算は減収減益で着地したが、外出自粛の打撃を受けた第1四半期から売り上げ・利益ともに過去最高水準までV字回復している。前年同期は消費増税前の駆け込み特需があった影響も大きい。第1四半期を底に業績は回復基調が続くと考えているが、一方で通期の見通しは期初計画を据え置いた。なお、期初計画は当社が見積もっている販売価格を3~5%下回り、金額にして1億~2億円程度利益を圧迫するというかなり保守的な前提で立てた。実際には利益率も第2四半期で例年並み水準まで回復している」
「オーダーメイド住宅マッチング『sumuzu(スムーズ)』の対象エリアを神奈川県横浜市、川崎市へ拡大した。都内23区もまだまだ開拓余地があり、この先は文京区や練馬区、杉並区などを視野に入れている」
――注力していく取り組みを聞かせてください。
「引き続きIT部門(エンジニア)の採用とメディアのブラシュアップに力を入れていく。また、現在準備を進めている『LANDIXプレミアクラブ』にも注力する。成約顧客を対象に限定サービスを提供し、リテンションをさらに強化する目的。まずは新サービスの第1弾として、収益用不動産の販売を行う。大相続時代を迎える中、収益用不動産は最も安全で有効な節税対策として富裕層からのニーズが高まっている。第2、第3弾のサービス開発も進め、収益機会の拡大と効率的なリテンションマーケティングによる成長を図る」
――中期の成長戦略を教えてください。
「軸は富裕層顧客の蓄積データと新サービス。23年3月期には顧客データ数10万件を目指す。日本は世界3位の富裕層大国とされるが、一方でこうした富裕層を対象としたビジネスは限りなく少ない。富裕層が求めているものを敏感にキャッチできる強みを生かし、富裕層がより豊かな生活を送れるようなサービスにつなげていきたい」
――最後に株主還元策に対する考え、投資家の皆さまへ一言お願いします。
「自己資本比率も利益率もほかの不動産会社に比べて倍。インターネットで効率化しているため不動産の売買スピード(回転率)が速い。増収増益を続けてきた中で現金を潤沢に持っており、内部留保が非常に充実している。財務基盤が安定しているからこそ、このコロナ禍で一層守りを固めて攻める状態をつくることができた。もう一段階高いレベルで結果を残していくべく種まきも順調だ。コロナの影響により、配当は前期の50円(記念配当10円+普通配当40円)から今期は30円(予想)へ減配したが、早期に以前の水準に戻し、安定配当を行っていく。安定的に成長しながら高い利益を出せる会社という点にぜひ注目してほしい」
企業名:ランディックス
事業概要:富裕層に特化した不動産デベロップメント事業、不動産マッチング・コンサルティング事業、オーダーメイド住宅マッチング・コンサルティング事業
上場日:2019/12/19
初値:3,660円