広告単価は緩やかな回復傾向
ALiNKインターネット(7077・東マ)は、一般財団法人日本気象協会と共同で天気予報専門メディア「tenki.jp」を運営している。12月10日に新規上場から1年を迎える。これまでの歩みを振り返るとともに今後の展望について池田洋人代表取締役CEO(最高経営責任者)に聞いた。
――上場から1年を振り返って。
「問い合わせが増えた点は上場効果として実感している。上場時に9名だった従業員数は、現在14名に増加。これまでなかった層からも問い合わせがくるようになった」
――御社の強み、特徴を教えてください。
「当社は『tenki.jp』事業1本の会社。強みの1つは、グロースハック(サイト企画・サイト制作・ユーザー分析のPDCAサイクルで改善活動を行うこと)によるPV数の獲得につなげていること。また、通常時と台風・地震など自然災害が発生した際のトラフィックでは大幅な高低差があるが、突発的にユーザーが急増する災害時にも安定的につながるシステムを構築・運用している。さらに、通常のメディアは広告配信を最適化するトレーディングデスク(広告運用を行う組織)という部分を専門企業にアウトソーシングすることが多いが、当社はこの機能を自前で持っている点が強み。気象情報に応じて親和性の高い広告商品を扱うことによって広告配信のパフォーマンスを向上させ、効率的なマネタイズ化を実現している。国内でも有数の機能であり、ほかのメディアから広告運用業務を依頼されることもある」
――事業環境と業績の進捗について。
「『tenki.jp』は広告収入が売り上げの柱。広告単価とPV数の向上が売上成長に比例する。春先の外出自粛下では『tenki.jp』においても天気予報を確認するユーザー行動が低下。さらに、例年は台風シーズン(6~11月)にPV数が伸びる傾向にあるが、今年は8月までで台風の国内上陸が0という異常気象だった。外的要因に恵まれない中でも、2021年2月期上期(3~8月)はグロースハックによる積極的な回遊施策を講じ、前年同期並みのPV数を確保できた。これはまだまだ媒体の伸びしろがあるということの表れでもある」
「広告単価は8~9月で底打ちした感覚。すぐさまのV字回復は見込めないが、来年以降のレジャー関連や余暇ビジネスの回復に伴い、緩やかに戻っていくものとみられる。なお、気象庁HPの運用型広告の業務委託については、9月15日に広告掲載を開始したものの、気象庁からの要請により翌16日から一時的に事業を停止している。今後の展開については現在も協議中だ。こうした状況を踏まえ、通期の業績予想はレンジ形式での開示に修正。売上高は5億5,000万円~6億2,000万円(前期比31.2%減~22.4%減)、営業利益は1億円~2億1,000万円(同73.5%減~44.3%減)を見通す」
“天気”を軸に周辺領域を拡大
――今後の成長戦略をお聞かせください。
「中期的には “天気”を軸として周辺領域を拡大し、独自のポジションを作り上げていく。まずは来期以降、ゴルフやスキーといったレジャー領域に注力する。ここでは既存の広告収入だけでなく、サブスクリプション型アプリの展開や都度課金の導入、天気に応じた価格変動制(ダイナミックプライシング)チケットの販売など、新しいマネタイズもポートフォリオに組み込んでいく」
「ビッグデータ活用の流れの中で、今後、気象データを活用したビジネスへの注目度が高まっていくだろう。当社は気象会社ではなく、気象情報を取り扱うことが得意な会社。天気関連のデータやユーザーのリアルタイムの位置情報などを保有している。先々ではこうしたビッグデータを第三者に販売することで、新たな価値を提供していく」
――最後に株主還元策に対する考え、投資家の皆さまへ一言お願いします。
「当面は事業への投資を優先する。“天気”は人々の生活に欠かせない身近な存在。今後の展開の広がりにぜひご期待いただきたい。また、『tenki.jp』は天気関連情報を取り扱うとあって、悪天候によりPV数が伸びる特性がある。将来的には気象予報士のネットワークの有効活用、自然災害の被災地に利益還元できるような仕組みづくりなどにも取り組んでいきたい」
企業名:ALiNKインターネット
事業概要:天気予報専門サイト「tenki.jp」の運営
上場日:2019/12/10
初値:4,020円