アストロスケールホールディングス(186A)が6月5日、グロースに新規上場する。
人工衛星運用者やロケット事業者向けに、宇宙空間における軌道上サービスを提供する。サービスは①衛星運用終了時のデブリ(宇宙ゴミ)化防止のための除去サービス②既存デブリの除去サービス③寿命延長サービス④故障機や物体の観測・点検サービス――の4つ。これを日本、英国、欧州、米国などにおいて、調査研究、研究開発、宇宙空間での実証・サービス等購入に関する契約の締結や補助金などの獲得をしている。
宇宙空間に漂うデブリの数は年々増加し続け、大きさが10センチメートル以上のデブリは3万6,500個超、大きさが数センチメートル級のものも含めると100万個近くに上る。また、大型のデブリは質量数トン、大きさ数十メートル級のサイズにもなり、これらは地球の周囲を秒速7~8キロメートルという非常に速い速度で飛翔している。
特に2020年以降は人工衛星の打ち上げなどにより、宇宙空間における物体(衛星やデブリ)の増加ペースが加速。その物体数は既に危機的な水準にまで達しており、低軌道における衛星の1キロメートル以内のニアミスの数が加速度的に増加しているほか、実際に物体同士の衝突も起きている。
自動車・船舶・航空業界などのようにアフターサービス(修理、点検、メンテナンス、廃棄)が整っていない宇宙業界において、持続利用可能なバリューチェーンの実現を可能にするのが同社の軌道上サービス。RPO技術と呼ばれる「安全に接近・捕獲し、何らかのサービスを提供する技術」をコア技術として自社開発し、当該技術に関する知的財産権を保有している。
現在、グループで計画中の衛星開発に関するミッションパイプラインは9つ。うち2つは交渉中の潜在的な未契約のプロジェクトであり、ほかにも協議中の潜在的ミッションが複数ある。今年1月にはデブリ除去技術実証衛星ELSA―d(エルサ・ディー)ミッションを完了。サービサー衛星(捕獲機)とクライアント衛星(模擬デブリ)から成る、デブリ除去に必要な一連の技術を搭載したE2E(エンドツーエンド)の世界初のデブリ除去実証であり、米宇宙業界誌や国際宇宙会議などで数々の賞を受賞した。
需要の拡大に対応するため、22~23年にかけて、英国、イスラエル、米国、そして日本の製造拠点および米国の研究開発拠点を拡張オープンした。昨年6月に連結子会社を設立したフランスにおいても、開発・製造拠点を設立予定。今後も軌道上サービス市場の伸びに応じて開発・製造体制を拡張していく。(SS)
概要
●事業内容=スペースデブリ除去や人工衛星寿命延長、点検・観測などの軌道上サービス事業
●本社=東京都墨田区錦糸4-17-1
●代表者=岡田光信代表取締役社長兼CEO
●設立=2018年11月
●上場前資本金=1億円
●発行済み株式数=1億1,169万2,500株(上場時)
●筆頭株主=岡田光信(上場前26.78%)
●公募株式数=2,083万3,300株(国内1,388万8,900株、海外694万4,400株 ※最終的な内訳は5月27日に決定予定)
●売出株式数=276万株(ほかオーバーアロットメントで312万4,900株)
●仮条件=5月20日に決定
●ブックビル期間=5月20日から24日まで
●引受証券=三菱UFJモルガン・スタンレー、モルガン・スタンレーMUFG、みずほ(共同主幹事)、SBI、野村、SMBC日興、楽天、東海東京、岡三、水戸、松井、マネックス、岩井コスモ、あかつき、東洋、アイザワ
業績推移(連結)
売上収益 | 税引前損失 | 1株利益 | 配当 | |
2022.4 | 910 | ▼5,563 | ― | ― |
2023.4 | 1,792 | ▼9,314 | ― | ― |
2024.4(予) | 2,700 | ▼8,000~▼11,500 | ― | ― |
※単位100万円、1株利益は円、▼は損失 |