オルツ(260A)が10月11日、グロースに新規上場する。
2014年の設立以降、一人一人に「P.A.I」(パーソナル人工知能、15年に商標取得)を提供するという世界観の実現に向けて、他社に先駆けて技術を蓄積するとともに、基盤技術となるLLM(大規模言語モデル)を自社開発。同社のLLMはハルシネーション(LLMが事実に基づかない虚偽回答をする現象)を極力排除できるよう設計している。
こうした技術を組み込んだプロダクトを展開。一人一人の言葉の癖や業界固有名詞にも対応し、ファインチューニングも可能な議事録自動作成ツール「AI GIJIROKU」を筆頭に、人間に代わり処理を行うエージェントをノーコードで作成できる「altBRAIN」、AIが質問を理解し適切な回答を提供する「AIコールセンター」、ユーザー自身の声やデータを学習させることで自分自身のデジタルクローンを作成できる「CloneDev」などをリリースし、売り上げを大きく拡大させている。
特徴は、相対的に安価に「P.A.I」プロダクトをクライアントに提供できていること。膨大なデータを学習した汎用的エンジンである「平均モデル」を構築し、それにパーソナルデータ(例えばSNS=交流サイト=やメールなどのデータ)を学習させることで、個人の思考、意思、癖などを反映した「個性モデル」を開発するのだが、その際の学習に必要なパーソナルデータはごく少量。これにより安価なプロダクト提供を実現している。
現在、売り上げの大半を「AI GIJIROKU」が占める。同社は英語などに比べ同音異義語が多く、音声認識が難解なアジア圏言語でのVoice-to-Text(文字起こしサービス)を強みとしている。今後は同製品をアジア諸国などにも展開し、日本ひいてはアジア圏でのシェア獲得を目指す。「AI GIJIROKU」のユーザー企業からカスタマイズやAIを用いた開発受託など、AIソリューション事業につながる流れも生じている。
上場に伴う公募増資で調達した資金は、広告宣伝費、研究開発費、採用関連費、借入金返済に充てる予定。(Q)
概要
●事業内容=デジタルクローンP.A.Tの開発を最終目的とした要素技術の研究開発とそれらを応用した製品群(Communication Intelligence 「AI GIJIROKU」)などの展開、AIソリューションの提供
●本社=東京都港区六本木7-15-7
●代表者=米倉千貴代表取締役社長
●設立=2014年11月
●上場前資本金=1億円
●発行済み株式数=3,334万4,700株(上場時)
●筆頭株主=龍川誠(上場前19.06%)
●公募株式数=750万株
●売出株式数=150万株(ほかオーバーアロットメントで135万株)
●仮条件=9月25日に決定
●ブックビル期間=9月26日から10月2日
●引受証券=大和(主幹事)、SBI、野村、あかつき、松井、丸三
業績推移(単独)
売上高 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2022.12 | 2,666 | ▼670 | ― | ― |
2023.12 | 4,111 | ▼1,497 | ― | ― |
2024.12(予) | 5,545 | ▼2,832 | ― | ― |
※単位100万円、▼は損失 |