ティムス(4891)が11月22日、グロースに新規上場する。
急性期脳梗塞などの新薬研究開発にあたる創薬型バイオベンチャー。微生物由来の生理活性物質の探索研究を中心とし、その作用解析や薬効評価などを行っている東京農工大発酵学研究室(蓮見惠司教授)の研究を実用化することを目的に、2005年に設立された。
新薬候補の基となっているのは、黒カビの一種であるスタキボトリス・ミクロスポラが産生する化合物と、約60種類の類似構造の化合物からなるSMTP化合物群。研究の過程で発見されたもので抗炎症作用があり、一部の化合物は血栓を溶解する効果を示す。
基本的な事業モデルは、医薬品開発につなぐ研究段階から早期臨床段階までを同社が行い、後期臨床段階からは国内外の製薬会社と提携して開発製造販売権を付与し、提携先製薬会社から開発一時金(マイルストーン)やロイヤリティ収入などを得るというもの。ただし、疾患分野によっては後期臨床段階も担い、承認取得のほか販売まで行うことも視野に入れている。
パイプライン(新薬候補)のうち、血栓により脳血管が閉塞して片麻痺や言語障害などを引き起こす急性期脳梗塞を対象とする「TMS-007」は、18年に米国のBiogen MA Inc.(バイオジェン社)との間でオプション契約を結んだ。ティムス社が17年から21年にかけて実施した前期第2相臨床試験では、発症後12時間以内の被験者に対して「TMS-007」を投与。急性期脳梗塞患者の「発症後90日での生活自立度」や「血管閉塞の再開通率」などで統計的な有意差を示し、この結果を受けてバイオジェン社は21年にオプション権を行使した。
バイオジェンはオプション行使料として1,800万ドルを支払い、ティムス社が持っていたSMTP化合物に関する特許権(出願中のものも含む)、データの所有権などは全てバイオジェン社に移された。これにより、以降の開発や各国での承認取得はバイオジェン社の責任と費用により行われる。一方で、今後の開発および販売状況に応じてティムス社は最大3億3,500万ドルのマイルストーンと、製品売上高に応じたロイヤリティ(使用許諾料)を受領する可能性があるとしている。
また、「TMS-007」に続くパイプラインの「TMS-008」は抗炎症作用を持つが、血栓溶解作用はほとんどなく、急性腎障害、がん悪液質など様々な炎症性疾患を対象として、24年2月期の臨床試験入りを目指している。
業績は、前22年2月期にはバイオジェン社のオプション行使による営業収益19億4,600万円を計上したが、今期は「TMS-007」の開発マイルストーンの達成に至らず、営業収益はない見通し。23年2月期の業績予想は営業損失8億9,600万円(前期は営業利益11億3,500万円)、当期純損失12億3,000万円(前期は当期純利益10億7,600万円)を見込んでいる。(YY)
概要
●事業内容=医薬品、医薬部外品、医薬品原材料、医療用機器および医療用消耗品の研究および開発
●本社=東京都府中市府中町1-9
●代表者=若林拓朗代表取締役社長
●設立=2005年2月
●上場前資本金=1億円
●発行済み株式数=3,653万4,880株(上場時)
●筆頭株主=大和日台バイオベンチャー投資事業有限責任組合(上場前12・22%)
●公募株式数=343万2,800株
●売出株式数=29万8,500株(このほかオーバーアロットメントで55万9,600株)
●仮条件=11月4日に決定
●ブックビル期間=11月7日から11日まで
●引受証券=SMBC日興(主幹事)、野村、みずほ、大和、三菱UFJモルガン・スタンレー、岡三、SBI、香川、楽天
業績推移(単体)
営業収益 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2021.2 | – | ▼720 | – | – |
2022.2 | 1,946 | 1,079 | 53.36 | – |
2023.2(予) | – | ▼1230 | – | – |
単位100万円、1株利益は円、▼は赤字 |