ミライロ(335A)が3月24日、東証グロースに新規上場する。
幼少期から車いすを利用している垣内俊哉社長が立命館大学在学中に起業。障害者の視点から各種サービスを開発し提供している。
最大の特徴は、障害者の生活に必要不可欠な障害者手帳をデジタル化し、スマホアプリ「ミライロID」として提供していること。障害者手帳の代替になるほか、プッシュ通知機能やクーポン機能、アンケート機能、マップ機能、ストア機能など多様な機能を実装しており、他のシステムとのAPI連携も可能。
2020年から政府が運営するマイナポータルと連携できるようになり、鉄道など交通機関、美術館など障害者割引を提供する施設、地方自治体の関連施設で障害手帳の現物がなくとも、スマホ画面の提示により障害者割引の適用が可能になっている。
障害者に無償で提供し、ミライロIDを広告・クーポン配信、各種販促などに活用する事業者から収益を得ている。導入事業者は全国4,100以上。オンライン上での商品・チケットの障害者割引販売や、交通系アプリとのAPI連携、駐車場の精算機での障害者割引適用、求人募集サービスなど、活用の幅が広がってきている。例えば、JR四国はミライロIDとの連携により、みどりの窓口に行かなくとも障害者割引価格で切符を買えるようにしている。類似アプリが存在しない大規模な障害者プラットフォームとなっており、行政や企業との連携、特許により参入障壁は高いという。
課題は認知度。利用者は月1万人ペースで増えているものの、それでも障害者手帳保有者(610万人)に対しミライロID利用者は現状32万人にとどまり、普及拡大余地は大きい。
障害者手帳は自治体ごとにフォーマットが異なり283種類に及び、正規の手帳か見分けるのは難しく不正利用が横行しているが、障害者手帳のデジタル化によってフォーマットは一本化されて利便性向上、不正利用防止にもつながる。厚生労働省は今年4月に各自治体に対しミライロIDをあらためて告知する予定にあり、普及拡大に弾みがつくことが期待される。
このほか、障害のある当事者が講師となるユニバーサルマナー研修・検定、聴覚障害者が金融機関や行政窓口などに訪れた場合にオンラインで通訳オペレーターが手話通訳を行う遠隔手話通訳サービス、手話・文字通訳派遣なども手掛ける。
いずれの事業も損益分岐点を超え黒字化。限界利益率は86%と高く、今後売り上げが増えれば利益率が向上する構造にある。上場に伴う公募増資で調達する資金は、ミライロIDソリューションの顧客体験向上およびセキュリティアップデートを目的としたシステム開発・改修費用、人材採用・人件費、ミライロIDユーザーの増加に対応するための利用者登録作業費、長期借入金、広告宣伝費などに返済に充てる予定。(Q)
概要
●事業内容=①デジタル障害者手帳「ミライロID」の企画、設計、開発、提供 ②ユニバーサルデザインに関する研修、リサーチ&コンサルティング ③手話通訳派遣、遠隔通訳など情報保障および手話講座の提供
●本社=大阪府大阪市淀川区西中島3-8-15
●代表者=垣内俊哉代表取締役社長
●設立=2010年6月
●上場前資本金=1億1,259万円
●発行済み株式数=1,047万5,000株(上場時)
●筆頭株主=垣内俊哉(上場前35.10%)
●公募株式数=125万株
●売出株式数=105万1,200株(ほかオーバーアロットメントで34万5,100株)
●仮条件=3月5日に決定
●ブックビル期間=3月6日~12日
●引受証券=SMBC日興(主幹事)、三菱UFJモルガン・スタンレー、みずほ、SBI、岩井コスモ、岡三、楽天、マネックス、松井
業績推移(単独)
売上高 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2023.9 | 582 | 11 | 1.93 | 0 |
2024.9 | 709 | 121 | 34.23 | 0 |
2025.9(予想) | 880 | 163 | 12.01 | 0 |
※単位100万円、1株利益は円 |