Chordia Therapeutics(190A)が6月14日、グロースに新規上場する。
がん領域の研究開発に特化したバイオベンチャー企業。当初は昨年9月15日に上場予定だったが、目前で中止した経緯がある。
最新の研究により、がんの発生や進行には「RNA制御異常」が大きく関与することが分かった。同社はこのRNA制御異常を標的とした低分子の画期的医薬品(ファーストインクラス)の研究開発を行っている。医薬品市場の観点から、ファーストインクラスの医薬品は初めて市場に出るため大きな市場を取れる可能性が高く、薬価算定の際にその有効性や新規性に応じた高い価格が設定されることが多い。
主に探索研究からPOC(治療概念の実証)までを注力領域とし、基礎研究、原薬および製剤の製造、流通・販売などは各外部協力先に委託するというビジネスモデル。事業提携はパイプライン(開発プログラム)の医薬品として市販される蓋然性が高まったタイミングで日本国外の販売権についてライセンス交渉を行うことを基本戦略としており、同社では第2相臨床試験の結果を確認できるタイミングが最適と考えている。
パイプラインは臨床段階2(CLK阻害薬、MALT1阻害薬)、前臨床研究段階1(CDK12阻害薬)、探索研究段階2(GCN2阻害薬、新規パイプライン)の計5つ。このうちMALT1阻害薬は全世界での開発および商用化の権利を小野薬品工業(4528・P)に導出しているが、その他のパイプラインは全世界での権利を同社が有する。
なお、小野薬品向けについては、2020年12月に独占的ライセンス契約を締結し、8億円の契約一時金を受領。また、23年2月には初回開発マイルストンとして25億円を受領した。今後、開発が順調に進んだ場合にはさらなる開発マイルストン収入を受け取るだけでなく、申請・承認された後で販売マイルストン収入やロイヤリティ収入を受け取ることができる。
CLK阻害薬は日本国内第1相臨床試験において複数の急性骨髄性白血病患者で奏功が確認できた。当面は再発難治性の急性骨髄性白血病での開発を優先させ、迅速承認制度の活用も視野に入れていく。現在は再発難治性の血液がんの米国第1/2相臨床試験を進めており、今年2月時点では12人の患者への投与を完了し、さらなる症例登録を進めている状況にある。
さらに、日本国内第1相臨床試験では卵巣がんや骨髄異形成症候群でも奏功が確認できており、それらがん種でも順次開発を進めて適応を拡大する。特に卵巣がんでは、プラチナ製剤による治療に抵抗性を獲得してしまい、治療選択肢が少ない患者に対して有効である可能性が示されており、今後、自社開発もしくは大手製薬会社との共同開発の可能性を積極的に探っていく。(SS)
概要
●事業内容=RNA制御ストレスを標的とするがん治療薬の開発など
●本社=神奈川県藤沢市村岡東2-26-1
●代表者=三宅洋代表取締役
●設立=2017年10月
●上場前資本金=9,000万円
●発行済み株式数=6,554万3,800株(上場時)
●筆頭株主=武田薬品工業(上場前14.71%)
●公募株式数=910万株
●売出株式数=オーバーアロットメントで136万5,000株
●仮条件=5月28日に決定
●ブックビル期間=5月30日から6月5日まで
●引受証券=SBI(主幹事)、野村、みずほ、あかつき、岩井コスモ、岡三、極東、東洋、広田、松井、丸三、水戸、楽天
業績推移(単独)
事業収益 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2022.8 | ― | ▼1,776 | ― | ― |
2023.8 | 2,500 | 225 | 223 | ― |
2024.8(予) | ― | ▼2,278 | ― | ― |
※単位100万円、1株利益は円、▼は損失 |