Sansan(4443)が6月19日、マザーズに新規上場する。

法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」、個人向け名刺管理アプリ「Eight」を展開している。名刺はビジネスの出会いのシーンで交換される慣習が根強く、そこには氏名や所属する会社、組織、役職、連絡先などのビジネスパーソンを表す正確な情報が記載されている。また、名刺交換の履歴情報自体にもユニークな価値があるほか、現在でも紙のままで日常的に利用されていてデジタル化は進んでおらず、業務効率化や有効活用の余地は大きく残されていると、同社では考えている。

「Sansan」のユーザー企業は名刺をスキャンするだけで、名刺情報はSansanグループの入力オペレーターなどによってデータ化され、クラウド型アプリを通じて「AI名刺管理」を利用することができる。各社員単位での名刺管理だけでなく組織内での名刺情報の共有も可能。また、最新の人物情報が通知される人事異動ニュースの配信や一括メール配信などの幅広い顧客管理機能を備えている。これらの基本機能に加えて、同僚とスムーズな情報共有を可能にする社内電話帳や、同僚の強みや知見を可視化する機能を備えた「同僚コラボレーション」、社内のデータ連携や複雑な顧客データの高度な名寄せが可能な「顧客データHub」といった機能も提供している。

クラウド上の名刺データにはパソコンやスマートフォンからアクセスが可能。「Sansan」の売上は利用料収入。月額利用料のほか、サービス導入時には紙で保管されている大量の名刺のデータ化などの付加サービスを有料で提供している。課金モデルは継続収入が見込めるサブスクリプション(月額課金)が中心で安定的かつ継続的な事業進捗(しんちょく)が見込める収益モデルになっている。

「Sansan」は名刺管理サービス市場を自ら創り上げてきたことで、同市場で81.9%(2017年)のシェアを持つ。契約件数は19年5月期の第3四半期末(今年2月)には5,738件となっている。12カ月平均の月次解約率は0.73%。

「Eight」はSNS(交流サイト)の仕組みを取り入れた名刺アプリで12年にサービスを開始。「Sansan」と同様に名刺をスキャンするだけで自分や交換相手の名刺情報が正確にデータ化される。今年2月末で235万人のユーザーを有する。ビジネスモデルはプロフィール管理や名刺管理機能が無料で使用できるアプリをベースに、一部利用機能を拡充した個人向け有料サービス「Eightプレミアム」や「Eight」における名刺共有を企業内で可能にするサービス「Eight企業向けプレミアム」などの課金プランが収入になる。19年5月期第3四半期累計の売上高は3億7,900万円と全体の約5%。

中長期的には、「Sansan」についてはビジネス・プラットフォームとして拡張性を強化する。提供している機能を外部のアプリケーションから利用できるようにするOpen APIや、社内の各データベースに散在する顧客データを「顧客データHub」などを活用して名寄せし、CRM(顧客管理システム)、ERP(統合基幹業務システム)などとの連携を強化する。「Eight」については、ユーザーに対して広告配信が可能な「Eight Ads」など企業向け有料サービスの開発・展開に注力する。

先行者メリットを活かしつつ売上拡大を目指すため、広告宣伝活動や開発活動、営業体制の強化などで一定の先行投資が必要となる。テレビコマーシャルなどを中心とした広告宣伝投資は新規ユーザー獲得に直接的に寄与することから積極的に実施している。広告宣伝費は17年5月期で16億円台、18年5月期は44億円台、19年5月期の第3四半期累計は22億円台。また、19年5月期末の人員は18年5月期末に比べて約140名程度の増加を予定している。

●事業内容=法人向け名刺管理サービス「Sansan」及び個人向け名刺管理アプリ「Eight」の提供
●本社=東京都渋谷区神宮前5-52-2青山オーバルビル13F
●代表者=寺田親弘代表取締役社長
●設立=2007年6月
●上場前資本金=28億1,250万1,000円
●発行済み株式数=2,993万2,353株(上場時)
●筆頭株主=寺田親弘(上場前35.90%)
●公募株式数=50万株
●売出株式数=701万株(このほかオーバーアロットメントで112万6,500株)
●仮条件=5月30日に決定
●ブックビル期間=6月3日から6日まで
●引受証券=野村(主幹事)、SMBC日興、大和、みずほ、SBI、三菱UFJモルガン・スタンレー、楽天、マネックス、極東