Synspective(290A)が12月19日、グロースに新規上場する。
小型SAR(合成開口レーダー)衛星を開発・製造・運用し、SAR衛星データの販売と衛星データを利用した解析ソリューションを提供している。内閣府の革新的研究開発プログラム「ImPACT」の研究成果の社会実装を目指し、2018年に設立された。
SAR衛星は、電波の一種であるマイクロ波を使って地表面を観測するもので、雲を透過するため全天候・全時間帯で地上観測をできる。従来のSAR衛星は1,000キログラムを超えていたが、同社の小型SAR衛星「StriⅩ(ストリクス)」は100キログラム程度に小型・軽量化し、低価格化を図ることで多数基生産を可能にしている。
収益源は「データ販売」と「ソリューション提供」の大きく2つ。データ販売は安全保障、防災・減災、インフラ・国土開発などの官需が中心。サービスはウェブ上で完結し、顧客は購入枚数契約に基づき、その期間内で同社プラットフォームを用いて地域を指定し、データを取得する。
一方、ソリューション提供ではStriXで取得したデータを中心に解析し、その結果を業務ですぐ利用できる情報として提供する。これによりSARデータの分析能力を持たない民間顧客も衛星データを利用できる。顧客は各国の省庁のみならず、損害保険、インフラ開発・土木工事、資源エネルギー開発などを手掛ける企業にも広がってきており、災害リスク・被害状況評価、大型設備と施工の安全管理・保守、地形・風況・森林などの環境調査などの需要に応えている。
期末運用機数は24年が4機。25年は6機、26年は11機と段階的に増やし、28年以降は30機以上による衛星コンステレーションを構築し、観測頻度の向上、ひいては高い収益性の実現を目指す。
SARは全天候で広範囲の撮像が可能という特性から、情報収集・警戒監視・偵察など防衛用途に広く使用されている。昨今の地政学リスクの高まりや国際情勢の複雑化に伴い、防衛用途の衛星開発・コンステレーション構築への投資は今後も拡大が予測されている。
日本の防衛省も、衛星データ活用に関する予算を過去5年間で約2.5倍に拡大。また、令和7年度宇宙関連概算要求において「スタンド・オフ防衛能力に必要な目標の探知・追尾能力の獲得」のため、令和7年度末から衛星コンステレーション構築に3232億円を要求。その衛星はSAR衛星が中心になると公表している。また、JAXAに設置された「宇宙戦略基金」(10年間で合計1兆円)の一部が、商業衛星コンステレーション構築加速に活用されることが決定している。
こうした環境下、同社は売り上げ成長に加え、補助事業による収入が一定程度とあるため、売上高と補助金収入を合算した総収入を当面は重要な指標として管理していく。(K)
概要
●事業内容=小型SAR衛星の開発・運用からSARデータの販売とソリューションの提供
●本社=東京都江東区三好3-10-3
●代表者=新井元行代表取締役CEO
●設立=2018年2月
●上場前資本金=29億5,012万円
●発行済み株式数=1億824万9,150株(上場時)
●筆頭株主=新井元行(上場前9.36%)
●公募株式数=2,130万4,200株(内訳は国内1,904万1,200株、海外226万3,000株の予定)
●売出株式数=オーバーアロットメントで319万5,600株
●仮条件=12月3日に決定
●ブックビル期間=12月4日~9日
●引受証券=野村(主幹事)、みずほ、SBI、東海東京、三菱UFJモルガン・スタンレー、SMBC日興、大和、マネックス、楽天、アイザワ
業績推移(連結)
売上高 | 経常利益 | 1株利益 | 配当 | |
2022.12 | 492 | ▼4,340 | - | - |
2023.12 | 1,386 | ▼1,951 | - | - |
2024.12(予想) | 2,283 | ▼3,465 | - | - |
※単位100万円、▼は損失 |