「中国EV」「国土強靭化」など“追い風”多数
“ダブル・エコ”なIH技術のパイオニア
高周波熱錬(ネツレン・5976)は東京都品川区東五反田に本社を置く、わが国で初めてIH(Induction Heating=誘導加熱)技術の事業化・工業化に成功した企業です。
IHとは電気の力で金属を加熱する技術。家庭ではIHクッキングヒーターとして利用されています。クリーンな電気を熱源とするため地球環境にやさしい無公害(Ecological)、かつ、省資源(Economical)と、“ダブル・エコ(Double Eco)”技術としても注目度が高まっています。
ネツレンでは、鉄の棒鋼をIH技術により表面加工処理することで、そのままでは摩耗してしまう鉄の硬度を高めた上で、自社製品として土木・建築関連や自動車関連メーカーに販売する、といった事業を展開しています。このような「高強度鋼材製品」のほか、メーカーから部材を預かる「熱処理受託加工」事業、装置そのものを販売する「高周波誘導加熱装置の製造・販売」事業の、主に3事業を展開しています。
中国EV向け新商品は期待大
引き合いが強いのがE V(電気自動車)です。ガソリン車と比較して重く、車体を支える懸架ばねへの負担が増加していることから、ネツレンでは、EVの車重に耐えられる世界最大径のITW(IH tempered wire、強度ばね用鋼線)を開発、中国市場に投入しています。
中国では「新車販売における新エネルギー車の比率を2025年までに20%、30年までに40%にまで引き上げる」とするなど、国策としてE V化が進められており、数多くのEVメーカーが乱立していますが、その主要部品として今後大きな販売が期待できます。
国土強靭化関連としても
建設も、同社の成長を語る上での大きなキーワードです。地震の多いわが国では社会インフラや公共施設、一般構造物の耐震性を高める必要があり、それに欠かせないPC鋼棒(高強度の鋼棒)を製造しています。引っ張りの力に弱いコンクリートにあらかじめ圧縮力を与えて強度を高めるためもので、高層住宅など大型建築物を支えるコンクリートパイル、電気やガスなどライフラインの収容空間となる地下共同溝、あるいは、新幹線のレールを支える枕木やスラブ軌道板などなど、あらゆる場所で使用されています。
「高強度せん断補強筋」という、コンクリート建築物の柱や梁の強度を高めて地震によるせん断破壊を防ぐ鉄筋も扱っています。鋼材に高周波熱処理を施すことで通常鉄筋の4倍まで強化したもので、IHに特化したネツレンの強みが発揮されています。
(福の神ポイント) 高周波熱錬はIHという環境面からも注目される技術のパイオニアです。3本柱で事業のバランスを保ちつつ、今後は中国EV市場と「国土強靭(きょうじん)化」という、どちらも国策に乗ったニーズ拡大が期待されます。
実績PBR約0.4倍、予想配当利回り3%超と株価指標面から見ても割安水準なので、このあたりは絶好の狙い目となりそうです。