イーディーピー(7794・G)が下げ止まらない。10日の“まさかの”下方修正に続き、16日には大株主から売却通知受領と発表し、需給懸念から一時20.8%安。これにより下方修正から5営業日で半値水準に急降下した。市場から「優等生から劣等生に転落?」とも言われているが、実態はどうか。
同社は人工ダイヤモンドの元になる「種結晶」を製造し、世界の人工宝石製造企業などに販売している。2022年6月の上場時、「天然ダイヤモンドと比べた安さや採掘に伴う自然破壊や児童労働問題などSDGs(持続可能な開発目標)の観点から引き合いが増勢。完全フル生産で生産すればすぐ売れる状況。今後数年はこの状況が続こう」と述べていた。
このコメントを裏付けるかのように、昨年8月、同11月と四半期決算発表の度に業績予想を上方修正し、株価は右肩上がり。昨年11月末には初値比3.4倍の2万7,990円を付け、同年IPOで初値から高値までの上昇率ランキングで3位(1位マイクロ波化学、2位サンウェルズ)に。
23年相場も“2度あることは3度ある”とばかりに3四半期決算(3Q)に向け上昇トレンドとなり2月8日に3万円台に乗せたが、10日に3Q決算と同時に下方修正。通期営業利益を従来の13億6,500万円から12億4,200万円(前期比2.3倍)へ引き下げたものの、8月の修正値(9億4,000万円)は上回る。下方修正の要因は「為替」と「小型宝石市場の変化」の2点。
為替は第2四半期(2Q)決算時に上方修正した際、前提レートを1ドル=140円に修正したが、その後の変動から130円に再修正。「ドルベース取引で為替変動の影響をストレートに受ける体質。今後は為替予約を含め為替変動の影響を抑える方策を検討したい」(IR担当)。
小型宝石市場はインドを中心に人工宝石製造企業の小規模事業者が増加。事業者乱立で安価品が増えたため大規模事業者が小型宝石の供給を絞ったことで、同社の小型宝石用種結晶の受注が2Q末ごろから減少。これまで生産能力の問題から供給を断っていた人工宝石製造会社との取引を2月から開始したものの、その“穴”を今期中に埋めるのは難しいとの判断から下方修正を行った。
もっとも、大手の人工宝石製造企業は小型宝石の生産を減らす一方、大型宝石の生産を増やす傾向にあり、同社でも大型用宝石の種結晶は順調に拡大。種結晶の販売個数に占める大型宝石向けの割合は前期の2~3割に対し、今期は5割以上に高まる見込み。大型宝石用は小型用に比べ単価が高く業績成長にフォローとなることから来期成長期待はついえていない。なお、大型宝石は小型宝石に比べ加工バリュエーションに富むため需要が伸びている。
今回ブロックトレードで保有株(保有割合8.19%)を全株売却する第2位株主の香港系企業は長年の株主で、IPO時に売り出しをしなかった。「一部製造装置の仕入れ先だが、株式売却が事業に与える影響はない」(IR担当)。トレード先が現状不明であり需給懸念はくすぶるものの、PER37倍に低下、25日移動平均からのマイナスカイ率は42%と全市場通算で最大。仕切り直しを探る局面接近か。(Q)