時流に乗った業態でありながら安値圏で低迷の続くITbookHD(1447・G)。5月2日にM&Aによる損失計上で善管注意義務違反の株主代表訴訟を提起されたとの発表を皮切りに、18日には連結子会社経理担当マネージャーの6,700万円横領、30日は公認会計士の異動、前週末16日にも連結子会社の会計処理に疑義があるとして特別調査委員会設置も発表している。同社に何が生じているのか…。
その一方で、26日の株主総会に向けては、「ITbookの企業価値向上を目指す株主の会」なる団体から6人の取締役選任を求める株主提案を寄せられている。そして、この団体を率いるのが、かつて大和証券常務も務めた恩田饒氏(写真)。88歳の年齢から一部で「米寿の反乱」などと報じられたが、2009~21年の長きにわたってITbook代表取締役を務め、この間、売上高を約80倍、時価総額を100倍以上に押し上げた御仁だ。
早速話を聞いてみたところ、後任社長である前俊守氏の資質が昨今のガバナンス危機を招いているとの話。もともと後継者を探していた恩田氏が、サムシング社長の前氏を紹介された際、①両社を統合して社名を「ITbook」とする②上場市場を当時のマザーズとする③恩田氏は東京五輪年に退任する――を条件に社長を譲った経緯がある。3年間は会長・社長で二人三脚を続けたが、「就任早々、サムシング出身者の給料を極端に引き上げたり、訴訟提起されたM&A案件には一度も交渉の場に現れず、結果多大な損失を招いたり、前社長就任後に15人の幹部が退職に至った」とのことだった。「ロシアのエリツィン大統領が07年に亡くなる際、プーチンを後任にしたことを悔いたとされるが、その心境」という。総会席上の“直接対決”が注目される。(K)