TOP  NSJアップデート  インタビュー  アルインコ 小林宣夫代表取締役社長×株式評論家 木村佳子氏<特別対談・前編>
インタビュー2021年11月4日

アルインコ 小林宣夫代表取締役社長×株式評論家 木村佳子氏<特別対談・前編>

足場の需要「随所に」存在、新型への切替など

多角化「電子機器」領域にも布石を投じる

アルインコ(5933)は足場など建設機材の製造・販売の大手。しかし先ごろプリント配線基板メーカーの買収を発表するなど、実は「4つの顔(セグメント)」を持つ。背景には、創業1938年の老舗企業ながらも業界のトップを走り続ける同社の巧妙な戦略が存在する。そんなアルインコの戦略をひもとくべく、小林宣夫代表取締役社長に株式評論家の木村佳子がインタビューを行った。前編、後編に分けて紹介する。

――アルインコといえば「足場」。近年は「大きな動き」があると聞く。

当社のコア事業は建設用の足場の製造、販売、レンタルである。この足場、現在は「過渡期」にあり、従来型から「新型」への移行が業界全体で続く。当社でも新型足場「アルバトロス」の拡販に注力しているところだ。

――「新型足場」とは何か。

足場への安全に対する基準は変化し続けており、従来型の足場に安全機材の追加などといったオプションなしで安全基準をクリアできるようにした製品だ。軽量化はもちろん、組み立て・解体のしやすさを高めたことで作業の効率化も図れる。現場までの運送コストや保管コストも低減できる。

――どんなところで使われているのか。

当社の足場は規模を問わず、あらゆる建設現場で使われている。新型に限らず、高さが2メートル以上の箇所で作業を行わせる場合には、足場の設置などの措置を講じなければならない。つまり、新築であってもリニューアルであっても建設現場には必ず足場へのニーズが存在するわけで、顧客企業は「従来型にオプションを足して使い続ける」か「新型に切り替える」かの二者択一を迫られている。

――アルインコは大阪に本拠を置く。東京オリンピックの次のビッグイベント、大阪万博との相性が良さそうだ。

もちろん大阪万博は一つの要素ではある。しかし「それ以外」、例えば、老朽化ビルの建て替え、マンションの大規模改修、高度成長期以降に整備された道路や橋などインフラの更新といった需要は、既に一定数、見えている。加えて、当社の足場は外部だけでなく建物内においても利用されており、内装工事や空調・照明設備工事を支える商品群も豊富に有している。

――実は足場「以外」の事業も強い。多角化経営が上手い印象だ。

当社は近年、既存事業とのシナジーが期待できる企業を買収するという方法で、効率的に事業の幅を広げてきた。今年4月に作成した「中期経営計画2024」でもM&Aなどの関連投資資金として45億円を計上している。そして8月にはプリント配線基板メーカーである東電子工業が当社グループに加わった。

――プリント配線基板のメーカー、どんなシナジーを期待しているのか。

当社は、足場などを販売する「建設機材関連事業」と、これら機材を建設会社やレンタル会社に貸し出す「レンタル関連事業」、はしごや脚立、フィットネス機器などの「住宅機器関連事業」、そして、無線機の製造販売を手掛ける「電子機器関連事業」の4つの事業セグメントを展開しており、東電子工業については「電子機器関連事業」とのシナジーを期待している。詳細についてはまだ申し上げられないが、これを契機に、既存事業の「周辺領域」を強化したい。

――結果「いろいろな顔」を持つ点がユニークだ。

アルインコというブランドですべての事業をやっているため、例えば、アマチュア無線をされている方、日曜大工が趣味ではしごや脚立を使われている方、そして個人投資家の方にはコア事業である「足場」と、それぞれが異なるイメージをアルインコに抱いていただいている。これこそが当社の戦略である。

<後編は11月12日付に掲載予定です>

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