人々の生活を支える実力派企業
環境関連、SDGsの側面も
イワキ(6237)はケミカルポンプの世界的メーカー。目立たぬBtoB(企業間取引)企業といったイメージだが、意外にも同社の製品は私たちの生活の身近なところで活躍している。あらためて会社への理解を深めるとともに、今後どのようなビジョンを描いているのか。代表取締役社長の藤中茂に株式評論家の木村佳子氏が聞いた。対談内容を前編・後編に分けて紹介する。
――「ポンプのデパート」と呼ばれるほどの豊富な製品ラインナップが特徴だ。
「ポンプ=水というイメージが強いかと思うが、当社は化学薬液を移送するケミカルポンプというものを手掛けている。例えば硫酸や塩酸といった金属を溶かしてしまう劇薬を扱っているため、液体に触れる部分については主にフッ素樹脂やセラミックを使うなど細やかな配慮が必要。薬液が漏れて人の肌に触れてしまうと大変な事故になりかねず、安全性についても非常に高いスキルが求められる」
「薬液移送だけではなく、用途によっては液体の温度を常時一定に保つことが求められたり、ほんのわずかなゴミが入ることも許されない。あらゆるニーズに応えなければいけないというのがケミカルポンプの難しさだ」
――取引先の業種が多岐に渡る。私たちが知っているような業種ではどんなところがあるのか。
「皆さんが最もイメージしやすいのが水処理市場だろう。浄水場で水をきれいにする工程で、一定濃度を保ちながら滅菌剤を入れる役割をポンプが担っている。そして半導体・液晶市場向けではスマートフォンやパソコンに搭載されている半導体の製造工程でもポンプを使う。ほかにもマヨネーズやケチャップなどの食品製造にも使われる」
――取引先の設備投資に応じて受注が発生すると思うが、納品後の耐用年数はどのぐらいなのか。
「製品によって異なる。長いものは20年以上長持ちする場合もあるし、逆に金メッキ用途で使うような消耗が激しいポンプだと半年持てばいい。納品後には定期的な修理・メンテナンスが必要で、この領域での信頼性の高さも当社の大きな強み」
――1956年に創業、日本の製造業の発展とともに成長を遂げてきたイワキだが、これまで様々な工夫をされてきたようだ。
「半導体製造装置向けの売上比率が非常に高い時期があった。半導体は市況の波が激しく、これが業績の波を引き起こす要因となっていた。特定業種の影響を避けるために、医療機器など幅広い分野に領域を拡大してきた結果、現在の安定した業績を出せる体質にもつながっている」
「医療では人工透析装置をはじめとした各種装置組込み用途のほかにも変わったところでは補助人工心臓の評価装置も手掛けている。近年では新エネルギー関連も。車載用リチウムイオン電池製造用途や風力発電機の変圧器を冷却する用途などでも当社のポンプが使われている」
――SDGs(持続可能な開発目標)の観点から注目できそうな製品もある。
「以前より当社製品は環境分野に貢献している。また昔から観賞魚を飼うためのポンプなども扱っており、魚を飼うノウハウが蓄積されているため、それらを結集した小型魚類集合水槽システムも当社が提供している。バイオ・ゲノム研究や排水影響管理などの用途に合わせた飼育・維持管理が可能な装置となる。DNA構造が哺乳類に非常に近いという点や動物愛護の観点などからも小型魚類の利用が注目されている。研究用途や環境配慮にも一役買うものとなっており、持続可能性という点でも注目できるものとなる」
後編は4月2日紙面に掲載予定です。
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