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インタビュー2024年10月24日

ウェルスナビ・牛山史朗執行役員(下) 急落時の対応はどうするか

投資に踏み出せない人や初心者はどのように投資へ向き合えばいいのか。ロボットアドバイザー最大手・ウェルスナビ(7342・G)の牛山史朗執行役員に話を聞く最終回。今年8月の急落時の対応やNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)の違いなど、投資を続ける際に注意することを分かりやすく解説する。

――8月に相場が急落したことで、ショックを受けた投資家もいた。

牛山氏 相場が大きく下がることも起こりますよ、ということを資産運用を始める段階で正しく認識することが必要。投資は預貯金ではないので、相場の波にさらされて増えたり減ったりする。そのような場合、目先のマイナスにとらわれるのではなく、なぜ自分が資産運用をやるのかの目的を思い出すことが大事。短期で変動しても何十年単位の長期ではずっと下がり続けるということはないだろう。

これまで金融危機と呼ばれ何年か混乱した時期はあったが、世界中の働いている人が経済をしっかり回して乗り越えてきた。世界経済の成長に投資することで報われるということを思い出せばよい。腰を据えて長い目で資産運用をすることが必要となる。

――急落の際に、ウェルスナビでは慌てないようにと利用者へメッセージを出していた。

牛山氏 投資といえばタイミングに乗じてうまく取引する発想だったのが、今は長期積立分散という考えがどんどん浸透している。短期的な相場に反応して動くのでなく長期的に考えましょうという発信を積極的に行っている。

――長期投資のためには、どのくらい投資に回せばよいのか。

牛山氏 収入の15~20%が一つの目安と言われるが、より重要なのが自分の資金を色分けすること。生活費など近々使うお金はしっかり確保する。その分まで投資に回していると、今回のような相場急落の際に、必要な資金を確保できない可能性がある。また、人生は病気など何が起こるか分からないため、緊急時に対応する生活防衛資金として、生活費の3~6カ月分は投資をせずに持っておく。その2つを除くと当面使わない余裕部分なので投資に回せる。ライフプランは各自で異なるため、ケース・バイ・ケースでどういう使い方をするか考えていく。また、機械的な天引きというのは一つの有効手段。余裕資金の範囲内で自分のリスクに合わせて投資することだ。

――NISAとiDeCoの使い方は。

牛山氏 どちらも税制優遇があり、老後の資産形成のために使う価値のある制度だ。違いは柔軟性で、NISAは何かあったときに売却し、引き出せるが、iDeCoは原則、退職時までは引き出せない。人生、予測ができないと考えると、NISAは何かあった際に引き出せる安心感がある。その観点からするとある程度NISAにメリットがあるし、確実に老後まで取っておきたいならiDeCoが良い。ここはバランスをとりながら考えていく。

――ウェルスナビは資産運用以外の領域も考えていると聞いた。

牛山氏 個人のお金の悩みはいろいろな問題がつながっている。資産形成は時間をかけるほど育っていく期待があり、われわれはまず、資産運用のサービスから提供した。だが、中にはなかなか投資資金が確保できない人もおり、家計を改善すれば投資に回せるケースがある。その中で、保険料は多くの人が支払っている。そこを改善できれば、老後の生活費のための投資額を充実させることも可能だ。

一方で、保険にしっかり入っていないと、万が一のときに遺族が困ることもある。どのようにバランスをとればよいのか、統合的なアドバイスが必要だということで、三菱UFJ銀行とMAP(Money Advisory Platform)というサービスの開発を進めている。

◆牛山史朗氏
京都大学大学院で金融工学を専攻。三菱UFJ信託銀行、野村証券を経て2015年12月にウェルスナビ参画。アルゴリズム開発などを手掛けている。