生き残りを懸け「本気で」勝ちにいく!!
シナネンホールディングス(8132)は2027年に創業100年を迎える石油、LPガスなどの燃料商社。世界が脱炭素社会に舵を切る中、生き残りを懸けて構造改革に取り組む山﨑正毅代表取締役社長に、株式評論家の木村佳子氏が聞いた。
――御社の強みは。
「強みはネットワーク、特に灯油石油関係の配送センター、LPガスの販売店を全国に持っていることだ。顧客との距離が近く、かゆいところまで手が届くと評判も良い。周辺事業として建物への空調設備・熱源機器の設置のみならず維持管理まで手掛けるなど、エネルギー事業とのコラボレーションを拡充することで今後もシェアを大きく伸ばしていく」
――創業時は豆炭や練炭を扱っていた。
「エネルギーの主役交代に伴って業態を変更、LPガスや石油に移行した。だが、自由化による競争激化などで再びビジネスモデルを大きく変えなければならないと危機感を持っている。脱炭素社会の実現に向けて、今、求められているのは、新たな業態への変革。石炭から石油に移行した『第二』に続く『第三の創業期』と位置付けている」
――化石燃料のウエイトが高いなか、新しい挑戦をどんどんしている印象だ。
「新規事業を創出していく。非エネルギー事業の割合も高めたい。そのために社員の意識改革を前面に押し出している。27年度に創業100年を迎える。大きく伸ばすためにも、22年度までの第2次中期経営計画は基盤整備の期間だととらえている。社員や新規事業に対して積極的に投資するとともに、事業の選択と集中を進める。代わりに株主に対してはROE(自己資本利益率)の改善と75円の安定配当を約束している。既に新規事業への投資は進めているので、23年度から始まる第3次中期経営計画では収益貢献が期待できるビジネスがいくつか出てきている」
――意識改革という面では女性登用も進んでいる。
「多様性を重視して、性別、年齢に関係なく、全員参加型で事業を進めている。昨年から新しい人事制度を導入して能力とやる気のある人材の活用を強化。シェアサイクルの会社の社長には、人事部門で活躍していた女性のチーム長を抜擢した。事業もアグレッシブに伸びている。まだ初期投資の段階だが22年度での単年度黒字化が見えてきた」
――シェアサイクル事業は世の中の流れに乗っている。
「時流に乗るといえば、新型マイクロ風車を使った発電システムも注目を集めている。来年度中に販売開始の見込み。再生可能エネルギーへの取り組みは投資家の関心が高いSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献にもつながり、今の時代に合った投資戦略だ」
「直近ではサンリオともコラボレーションをしている。『シナネンあかりの森プロジェクト』という取り組みで『ポポネン』というオリジナルキャラクターを作り、クリーンエネルギーの推進と森林保護活動の支援を行っている」
「コロナ禍で、抗菌事業も注目を集めている。国内外から問い合わせが増え、現場ではプライドを持ってものづくりにあたっている」
――株価は割安のイメージだ。
「早い段階でPBR1倍を達成したい。そのためには株価を5,000円程度まで引き上げる必要があるが、今の主力のLPガス、灯油は固定マージンビジネスで利益率が低い。ROEを上げるには事業の選択と集中を徹底的に行い、利益構造の高い新規ビジネスを生み出さなければならない。だからこそ社員の意識改革を徹底的に行い、同時にこの決意を社外にも知ってもらうべく広報活動にも非常に力を入れている。最近は毎週どこかのメディアで当社グループの名前が取り上げられている」
――割安感に今の取り組みを知れば、購入のモチベーションが上がる。
「100周年に向けて一生懸命頑張っている。社員にも株主の皆さまにも、当社グループに引き続き期待してほしい」