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銘柄・相場情報2021年10月14日

シナネンホールディングス 「第三の創業期」に向けた“仕込み”の進捗に要注目

激動のエネルギー業界で “しなやかに” に生き抜く老舗

1927年創業の燃料商社、2027年の100周年に向けて「大改革」の最中にあるシナネンホールディングス(8132)を取り上げる。先ごろ韓国における大型陸上風力発電事業の計画の見直しを発表したものの、翌日の株価は終値ベースで前日比60円高の3570円、一度も前日の高値を割り込むことなく終えるなど影響は“微風”だった。

守りながら「攻める」 競争激化でも収益安定
かつて家庭用燃料として誕生した豆炭にいちはやく着目して製造販売を開始。その後は練炭、石炭、1950年代には灯油、ガソリン、重油、軽油などの石油製品、LPガスと、エネルギー需要の変遷に合わせて商材を変更、大胆な事業転換・拡大を繰り返してきた同社。近年は「脱炭素社会の実現」という逆風が従来型エネルギーには吹き荒れているが、それでも2016年から電力小売りを開始、冒頭の風力発電など再生可能エネルギー開発に取り組むなど、同社は攻めの姿勢を忘れない。

魅力の一つに「収益の安定感」がある。逆風の中に身を置き、新規事業への投資を重ねながらも、近年は利益ほぼ横ばいを維持している(図)。売上高は仕入価格の変動に左右されるものの、独立系ゆえに販売時の利ザヤをコントロールできていること、業容拡大が奏功してバランスのとれたポートフォリオを実現しつつあることなどが要因だ。

安定顧客網×豊富なラインアップ
「ミライフ」ブランドの店舗を全国に構えて一般家庭や小売事業者向けにLPガスや石油などの各種燃料、キッチンなど住宅機器を販売する「BtoC事業」、大口需要家向けに石油製品や燃料を販売、あるいは太陽光発電システムの開発・建設・販売・メンテナンスを手掛ける「BtoB事業」を展開する。

このように「幅広い顧客」に向けて「多様な商品」を提供するのが強み。例えばLPガスは取扱量が約50万トンと国内第3位の規模で、販売先が約22万軒あるものの、16年から始めた電力小売りの一般家庭向けは約4万5,000軒にとどまるなど、既存顧客の活用による収益力向上という大きな潜在能力を秘める。

「新規事業」は収益フェーズへ
喫緊の課題である第三次エネルギー革命を乗り越えるカギ、新規事業も大きく育っている。エネルギー同様に「人々の暮らしを側で支える」という観点から誕生したのが自転車事業。中でも商業施設や住居などに自転車を配置、共有する、シェアサイクル「ダイチャリ」事業は、3月末現在でステーション数1,800カ所、設置自転車数8,200台と、国内トップクラスの規模に。

直近では京王グループ、埼玉県ふじみ野市や富士見市など自治体と連携。公共交通の機能の補完・代替と「第三の交通インフラ」になることを目指す。現在は先行投資が続くものの会社側は23年度から始まる第三次中期経営計画での黒字化を見込んいる。

マイクロ風車は大いに注目できる。そよ風程度で発電可能、最大回転時でも作動音が30デシベルと図書館の中より静かな上に、ビルやマンションの上に複数個を縦に並べて設置可能なレベルの小型・軽量化を実現した。現在は大宮・さいたま新都市で進められているスマートシティ実証実験に参画中。こちらは23年度中の販売をイメージしている。

23年度からの飛躍・躍進に向けて
同社は20年3月期から22年3月期までの3カ年を「第二次中期経営計画」と位置付け、マイクロ風車など新規事業の育成に注力。結果、22年3月期は増収減益を計画するものの、続く23年4月からの「第三次中期経営計画」では大きな飛躍を目指す。

翻って、冒頭の韓国事業。10月8日に商業運転開始時期を「21年度下期中」から「未定」に変更すると発表している。22年3月期は本事業の費用を営業外利益として織り込んでおり、短期的には経常利益以下に関してプラス要因に。第三次中期経営計画への影響は気掛かりだがクリアすることを期待したい。