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銘柄・相場情報2025年2月28日

<ズームアップ> アイ・ピー・エス フィリピン通信事業者として財閥系2社に次ぐ3位 陸揚げ局周辺にAIデータセンター建設へ

アイ・ピー・エス(4390・P)はフィリピンで国際通信事業を手掛けている。進出当初は通信回線を仕入れて転売するビジネスだったが、国際海底ケーブルの使用権取得や国内海底ケーブル網の構築を進めたことで、現在では大手通信事業者2社に次ぐ3位の国際データ通信キャリアとなった。このほど株主向けに開催した視察旅行に同行し、首都・マニラの成長ぶりを体感したほか同社の事業戦略を深堀する機会を得た。

2012年に同国通信事業者に国際通信回線の卸売りをスタート。20年代に入るとC2C(City-To-City)と呼ばれる海底ケーブルの使用権取得、23年12月の海底ケーブルネットワーク・PDSCN(Philippine Domestic Submarine Cable Network)の完成によって、日本基準のインターネット回線をフィリピン全土、およびシンガポール・香港などに提供している。

ビジネスモデルは主に2つ。川上事業は同国の通信事業者へのネットワーク回線の提供だ。主要な顧客はケーブルテレビ会社、事業法人、政府機関、地方自治体などで、国際回線を財閥系キャリアに貸し出すこともある。収益は回線の使用権を一定期間リースすることで得られ、今期の売上高見通しは110億円程度と、全社計画の165億円のうち7割を占める。今後は中部のビサヤ諸島や南部ミンダナオ島など地方の顧客開拓を推進する。

一方、川下ではマニラ首都圏の現地法人およびユニクロやニトリといった日系を含む外資企業に、自社通信インフラを活用したインターネット接続サービスを提供している。ARPU(月額の顧客単価)はおよそ4万ペソ(約10万円)。現在の顧客数は1,600件ほどで、マニラ首都圏でのシェアは数%にとどまるが、数年のうちに10%台に引き上げるべく契約件数積み上げに注力している。

新たな施策として海底ケーブルと地上をつなぐ専用施設である陸揚げ局の周辺にAIデータセンター(DC)を建設する取り組みも始めた。マルコス大統領はDC誘致や政府関係ドキュメントのデジタル化を加速させる方針のため、通信事業者ライセンスを持つアイ・ピー・エスの優位性を生かせる。宮下幸治代表取締役は「日本とフィリピンの陸揚げ局の近くにDCを建設し、成長するアジアのAIコンピューティング市場を取り込みたい」と述べている。

通信事業は社会インフラそのものであるため、国のマクロの成長性に密接にリンクする上、現政権では通信インフラ改善を重要政策に掲げるといった追い風も吹く。活気に満ちたマニラ経済の動向を含め、後日、視察旅行の詳細をお伝えしたい。(NA)

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