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インタビュー2020年3月24日

トップインタビュー キーコーヒー 創業100周年「優待拡充」が話題 代表取締役社長 柴田裕氏

コーヒーへの情熱「共有」で個人投資家を魅了

キーコーヒー
代表取締役社長 柴田裕氏

キーコーヒー(2594)が8月に創業100周年を迎える。レギュラーコーヒーの製造・販売大手、青地に黄色い鍵のロゴマークでおなじみの同社。実は、日本のみならず世界のコーヒー文化にいくつもの革命を起こしてきたパイオニア企業であり、SDGsという言葉が誕生するよりもずっと前、1970年代にはインドネシアのコーヒー生産地を再生させた実績もある。

――投資家の関心が高いSDGs、既に1970年代から取り組んでいた。

「おいしいコーヒーを追求した結果だ。第二次世界大戦の混乱で表舞台から消えてしまった希少種のトラジャコーヒー。約40年後の1973年に現地調査をスタートしたのだが、徒歩でようやくたどり着ける山岳地帯、ジャングルの中の荒れ果てた農園で細々と育てられている状態だった」

「トラジャコーヒーをインドネシアの貴重な農産物資源としてよみがえらせることを強く決意した当社。翌年には関連会社を立ち上げて、農園のみならず道路などインフラを整備したり、地元民に正しい栽培・精選技術を広めたり、良質な苗木や肥料を無償配布するといった活動を続けてきた。その結果、5年後の1978年に『トアルコ トラジャ』というブランドで日本での販売を開始することができた。そして現在も共に汗を流し、毎年、優秀な生産者や仲買人を表彰する会を開くなど、当社は現地と密接にかかわり続けている」

――コーヒー生産者だけでなく株主とのつながりも深い。

「当社の株主数は4万2,000人ほどで大部分が個人。昨年6月の株主総会には2,000人を超える方々がご来場された。『コーヒーがとても好き』という方が多く、場内で運営をサポートする社員たちとのざっくばらんな語らいも楽しみにされているようだ。秋に本社で開催するチャリティセール、株主の中から抽選でご招待する工場見学会といったイベントにも毎回、多数の方が参加される」

時代をリードし続けた100年、SDGsでも先駆

――株主優待が人気だ。

「自社商品の詰め合わせを年2回、贈っている。100株以上、300株以上、1,000株以上と3つの区分を設けていたが、今年1月に『200株以上』を新設。保有株数によって中身は異なるが、300株以上保有する方には、このためにだけに用意した『株主様限定ブレンド』を必ず加えている。当社が情熱を注いだ特別なコーヒーを一緒に楽しんでいただきたい」

――100周年記念として優待の拡充を発表した。

「2020年3月末の優待品については通常の内容に加えて、こちらも非売品の『100周年記念ブレンド』をすべての株主にお届けすることにした。さらに『株主様限定ブレンド』についても対象を従来の『300株以上保有』から『200株以上保有』に拡大した」

「ちなみに優待品にはアンケートはがきを同封しており、毎回数千通が送られてくる。商品や優待品への感想だけでなく、味に関するきびしいコメントも少なくないが、こうして率直な意見を多く頂戴できるからこそ、当社はさらに成長できる」

――ファンの心を離さない。コーヒーに一途な姿が支持されている。

「1920年の創業時には憧れの存在だったコーヒーを『誰もが気軽においしく楽しめるようにしたい』との情熱を、現在も変わらず持ち続けている。翌21年にはコーヒーを甘い希釈タイプにして親しみやすくした『コーヒーシロップ』を販売して大ヒット。その後も、専用器具がなくともカップに乗せてお湯を注ぐだけで本格的なレギュラーコーヒーが楽しめる『ドリップ オン』を開発したり、あるいは、今では定番となったキリマンジャロコーヒーをいち早く輸入、長期間の鮮度保持に最適な真空パックなどの包装技術を導入したりと、コーヒーが持つ可能性を追求し続けてきた。これからの100年もおいしいコーヒーと出合う感動を多くの方に提供していく」

――今後について。業績見通しを聞きたい。

「業績については公表している通り。2020年3月期は売上高640億円(前期比0.6%増)、営業利益6億円(同21%増)を計画しており、達成に向けて努力している。足元の状況は不透明ではあるが、近年はコンビニやカフェチェーンなどコーヒーに触れる機会が増えたこと、健康有効性が医学的に確認されたことなど、コーヒー消費には依然として追い風が吹く」

「当社は販売先が業務用、家庭用、缶コーヒーなど向けの原料用と3つにバランスよく振り向けられていることも強み。足元では家庭用、通販向けの販売が伸びている」