TOP  NSJアップデート  インタビュー  トップインタビュー ハークスレイ 食のインテグレーション企業へ 青木達也会長
インタビュー2024年6月17日

トップインタビュー ハークスレイ 食のインテグレーション企業へ 青木達也会長

M&Aてこに売上高1兆円目指す

「ほっかほっか亭」が1976年6月に温かい持ち帰り弁当を日本で初めて提供してからおよそ半世紀。ハークスレイ(7561・S)は弁当事業のフランチャイズ展開によって成長を遂げたが、足元では『食』の領域で生産者と消費者をつなぐインテグレーションを推進している。構造変革を実施して事業の多角化を図り、将来は売上高1兆円というグランドデザインを描く青木達也代表取締役会長兼社長(写真)に今後の取り組みを聞いた。

――現在、推進中の構造変革について聞きたい。

「消費者に商品をお届けする川下であるスーパーなどリテールの現場は、深刻な人手不足により自前で総菜を作ることができなくなりつつある。そこで食材の調達から製造・物流までを手掛ける傘下のアサヒL&Cの受注が拡大しており、工場はフル稼働の状況。今後は関東をはじめ東海や九州で加工工場のM&Aを進めたい」

「一方、原材料の調達に関しては農業、漁業、畜産業界との連携を強化している。農産品の価格は天候などの影響で乱高下しやすく、コメの例を挙げると例年だと60キログラム当たり1万5,000円程度だが、足元では2万5,000円台まで高騰している。我々は生産者との年間契約によって安定的な調達を可能にしており、生産者側も安心して規模の拡大や合理化に取り組んでいる状況だ」

――中期経営計画の目標に5割増収を掲げた。自信のほどは?

「今次中計では2028年3月期の売上高目標を720億円(24年3月期実績は467億円)とした。もっとも、先ほど申し上げた通りM&Aを進めていき、例えば年商50億円規模の企業を年間3社取得していくと、3年で最大450億円が上積みされて900億円を超える。中計でお示しする数字を達成し、上積みしたいと考えている」

「創業50周年に当たる30年には売上高3,000億円くらいまでもっていきたい。持ち帰り弁当事業の一本足から多角化していく過程は流動的だが、基本は『食』に関連する事業を拡大していく。実際、設備も人材もありながら単独では苦戦している年商100億円前後の企業は日本にたくさんある。既にM&Aの仲介会社をはじめ銀行・証券から多くの情報提供があり、今後、ハークスレイの業容が拡大していけば、これまで情報が入ってこなかった年商500億円規模の企業とかサイズアップした案件が持ち込まれる。食文化が日本と近いベトナムやフィリピンといったアジアの企業とも組んでいき、30年の3,000億円は十分いけると考えている」

――売り上げの伸びが加速するイメージだ。より長期のビジョンを聞きたい。

「ひとつの目安として年商100億円の企業が100社傘下にあると、最終的には売上高1兆円の達成が見えてくる。20年かかるか、30年かかるか分からないが、この100社と全国の生産者がつながるということ。国内の農業のボリュームがそれだけ膨らむ一方で、100社くらい『食』の分野でグループ化すれば、必ずどこかで工夫ができて無駄を減らせる。目指すのはウインウインの関係だ」

ハークスレイ(7561・週足)

――祖業の持ち帰り弁当はどうする?

「中計の策定と合わせて『持ち帰り弁当事業』を『中食事業』に変えた。弁当でなく持ち帰り料理といった感じで、おじいちゃんの誕生パーティーのメニューから、VIP向けの高級料理まで。店舗も試行錯誤しながら出店を増やす。駅前やロードサイドで不特定多数を相手に、デパ地下の総菜のように持ち帰れるような業態だ。ほっかほっか亭の美味しいというブランドから一段レベルアップした品質で勝負したい」

――株主還元に対する考え方は?

「安定的な配当に注力している。配当が上がったり下がったりブレるのではなく、現在は配当性向20%を下限として、利益の伸びに合わせ前年を下回らない増配を目指す考えに配当方針を変更した。24年3月期実績年間24円から、28年3月期には年間35円を目標に掲げた」

――個人投資家へのメッセージをお願いします。

「ハークスレイといえば持ち帰り弁当のイメージが根強いことは、我ながら努力が足りていないと反省している。まずは、会社がこう変わっていくという点に関し、もっと露出を増やしてアピールしていきたい。『食』のインテグレーションをプロデュースする役割を担うことが伝われば、ほかに事例がないということで期待をかけていただける。それから当たり前のことではあるが、半期ごとの業績が確実に計画を上回る数字でお示しできるよう取り組んでいく」

〈記者の視点〉 ハークスレイが掲げる『食』のインテグレーションは、日本の農業が抱える経営の規模拡大やスマート農業に寄与するのみならず、消費者には安心・安全な料理を低価格で提供することが可能になる。海外も視野に入れた取り組み強化も含め、『食』を通じて豊かな明日を創造するという同社の理念が高く評価されていくだろう。(NA)