上期はいよいよFDAミーティングも
メディシノバ(4875・S)は米国を本拠に医薬品の開発を行う創薬ベンチャー。主力開発品は『MN―166(イブジラスト)』と『MN―001(タイペルカスト)』という2つの低分子化合物で、様々な適応領域において臨床開発を進めている。足元では複数のプログラムで大きな進捗があった。岩城裕一代表取締役社長兼CEO(写真)に話を聞いた。
――まずはどんな会社か教えてほしい。
メディシノバは有効な治療法が確立していない疾病(=アンメット・メディカル・ニーズ)に応える新薬の開発を目指している。特徴は、既存の医薬品を当初の目的とは異なる治療薬として再活用する「リポジショニング」という開発手法を取っていること。これによって開発された薬は世界に数多くあり、例えばアスピリン(沈痛解熱剤→血栓予防剤)やバイアグラ(狭心症治療薬→男性機能改善薬)などが代表に挙げられる。
リポジショニングは今の時代にマッチした非常にエコな開発手法だ。既に安全性が証明された薬なので、試験をある程度スキップすることができ、開発期間の短縮やコストを低減できるといった利点がある。動物をむやみに犠牲にすることもない。
――計11のプログラムで進展があったようだ。
前2023年12月期を終えて、無事に第2相試験が終わったもの、新たに第2相/第3相試験に入ったものもある。いよいよ最終段階に差し掛かり、私たちのロードマップがクリアになってきた。
例えば、MN―166ではグリオブラストーマ(神経膠芽腫)という難治性の脳腫瘍を対象としたプログラムが進行しているが、こちらは第2相試験が終わり、現在はデータベースロックの準備中。また、米国政府機関との共同開発である「塩素ガス暴露に起因する急性肺損傷」については、3月に行われる米国毒性学会の年次総会において未発表の内容も含めたデータを発表する予定。
塩素ガス暴露による肺障害のプログラムに関しては今年度の上半期中にFDA(米食品医薬品局)とのミーティングを予定しており、ここで今後の方向性や今後のステップについてFDAからのアドバイスが出される。ALS(筋萎縮性側索硬化症)も今年度上半期には中間解析を行う予定で、現在はその準備を進めている。グリオブラストーマに関しては今年度中にFDAと会議を持ち、次の治験計画を話し合う予定。ほかにも、新型コロナ後遺症で第2相/第3相試験をカナダで開始し、MN―001は糖尿病・脂質異常症・非アルコール性脂肪性肝疾患を対象とする第2相試験が米国で進行中だ。
――足元では営業赤字が続いているが、財務状況は大丈夫か。
当社は今までMSワラントを一度も発行したことがない。前期末時点で約75億円の現預金を保有しており、25年度まで現状の開発プログラムに必要な資金を十分に確保できている。過去5年間にわたって開発費は毎年10~11ミリオン(15億円前後)程度で推移しており、今後もほぼそのレンジ内に収まるだろう。
加えて、いま米国は利息が高い。23年は日本円に換算すると3億円弱の利息収入があった。また、サノフィグループに導出済みのプログラムによるマイルストーン収入も1億5,000万円あった。今後、プログラムの進展に伴いさらに追加的なマイルストーン収入が得られる。
――昨今は東証が上場企業のIR(投資家向け広報)支援の専門部署を開設するなどの動きもある。こうした中で、御社はかねてより情報発信に積極的な印象だ。
バイオ・製薬とほかの業種との違いは、治験にかかる期間や費用が大体予想できること、薬事承認までのステップが明確であること。治験ステージが進むとさらに薬事承認までの道のりが明確になる。一方、頻繁にニュースがあるわけではないので投資家とのコミュニケーションは非常に大切だと考えている。
当社では一週間に一回、日本と米国でメディシノバに届いたすべての質問に皆で目を通し、質問内容に応じて適宜回答するようにしている。大阪証券取引所および米国NASDAQに上場した時からフェアに情報を公開している企業というお褒めをずっと頂いてきた。引き続き日米両国のルールに則り「情報開示にクリーンな会社」であり続ける。(SS)