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インタビュー2024年6月25日

トップインタビュー NEW ART HOLDINGS 業績V字回復へ改善に着手 代表取締役会長兼社長 白石幸生氏

調達機能を見直し、強化

NEW ART HOLDINGS(7638・S)はブライダルジュエリーとアートを柱に、近年はエステティックサロン運営やリゾート開発など事業多角化を進めている。今年4月には香港で和牛の輸入卸売を行うWah full社をグループに迎え入れたほか、海外人材紹介事業も開始した。一方で、前2024年3月期は業績を下方修正する事態に。その経緯と、直後に公表した3カ年計画について白石幸生代表取締役会長兼社長が語った。

ピンチはチャンス

かつての英デビアス社を頂点とする世界のダイヤモンド市場の勢力図は大きく変わり、近年はロシアによるウクライナ侵略、中東情勢の緊迫化などにより流通の問題も生じている。当社もこの5~6年間は原石の仕入れでアンフェアな取引を強いられる状況にあった。

こうした中で、前期は主力のブライダルジュエリーにおいて価格転嫁が充分に行われず、業績の下方修正に至る大きな原因となった。円安の急速な進展や原価高騰に対し、競合各社が複数回の値上げを行っていたところを、当社は1回の値上げに留まっていた。

私はピンチをチャンスと捉え、自らリーダーシップを取り新しい流通体制を築くことにした。ダイヤモンド市場の主戦場となっているインド、ドバイの視察に行ったところ、ダイヤモンドの研磨で一番難しいとされているメレダイヤ(0.1カラットから0.2カラットの小さなダイヤモンド)を扱う工場があり、調べるとその工場で生産している9割を当社が購入していることが分かった。現在はここを専属工場にしようと取引の条件を煮詰めている段階だ。

仕入・製造部門を分社化

ブライダルジュエリー事業については、販売部門と仕入・製造部門を分けて調達機能を強化する。グループの基幹事業を担うニューアート・シーマを「NEW ART」に改め、NEW ARTで40億円、仕入・製造部門を専門に扱う新会社(NEW ART貴金属総合研究所)で20億円の経常利益を達成するめどが立った。

NEW ARTと新会社にそれぞれ新社長を据えて、業績V字回復に向けた施策を進めていく。新会社では前述の0.2カラット以下の専属工場のほかに、0.3~1カラットまでの石を扱う工場、そして1カラット以上の石を扱う工場を計画している。ドバイのフリーマーケットである原石市場へ参入し、これまで原石の調達元であったサイトホルダーと対等の立場で原石を買い付けることができるようになる。

新社長のコメント

NEW ART 濵野えり(大坪えり)代表取締役社長

「銀座ダイヤモンドシライシ」は今年創業30周年を迎える。当社の強みであるマンツーマン接客をさらに磨き上げるとともに、今後は「人材の育成と定着」にも注力する。労働環境の整備や従業員への還元をはじめ、お客さまの声を全社で共有し従業員の教育に役立てる体制づくり、各店舗の責任者のケア、プロフェッショナル人材の育成などに取り組む。

NEW ART貴金属総合研究所 石田直也代表取締役社長

ダイヤモンドは国際商品でもあり、取引される資材である以上はモノの値段があり、相場があり、マーケットがある。その部分もより会社として追求していく。私自身はメガバンクに25年以上勤務してきた。ダイヤモンドに関しては全くの素人ではあるが、協力工場を含む多くのメンバーの支えを得ながら、大企業で培ってきた経験を生かしていく。(SS)