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インタビュー2023年6月29日

トップインタビュー NEW ART HOLDINGS 白石幸生氏 売り上げ重視から“利益重視の経営”へ

ジュエリーは商社機能で安定性補う

NEW ART HOLDINGS(7638・S)は1994年に日本初のブライダルジュエリー専門店「銀座ダイヤモンドシライシ」を開業。業界トップランナーとしての地位を確立し、近年は“アート”を軸に事業多角化を進めている。もちろん業績も好調で、今2024年3月期は売上高237億円(前期比10.4%増)、経常利益40億円(同18.7%増)と前期に続く過去最高益を見込む。代表取締役会長兼社長の白石幸生氏に近況と今後の成長戦略を聞いた。

――『売り上げ重視の経営から利益重視の経営に変革』と発信している。

「もともとそういう考えは基本としてあった。ある意味使い古された言葉かもしれないが、いずれの産業においても最終的に生き残ったところは “利益重視の経営”を行っている。ビジネスはもう地球規模で考えていかなければならない時代。この先何百年と続く会社になるため、今期からは経常利益をより重視した経営に切り替え、後継者候補の育成とともに全社的な意識改革を進めていきたい。おかげさまでブライダルジュエリー事業では既に実績が出ており、4~6月の経常利益は前年実績を上回る見通しだ」

――ウクライナ情勢の長期化や為替変動、資源価格の高止まりなど先行き不透明な状況が続いている。

「例えばダイヤモンドで言えば、国際的に流通しているのは原石とルース(原石を研磨・加工した裸石)の2つ。このうちルースは主要国を中心に1つの平和の中に流通している。一方、様々な利権が複雑に絡み合う原石市場は、現在はロシアによるウクライナ侵攻の影響を背景に、インドの商人が一番力を持っている状況にある。利益重視の経営にかじを切る中で、採算性の高い事業を安定させるために、いま当社に必要なのは資源を扱う商社のような機能だ。鉱山までいかなくても原石の流通ぐらいまでは携わっていたい。言葉をまとめるなら、国際情勢に左右されない供給体制を自分で築いていくことではないか。これから政治がどう変わろうと商売を続けられる組織を作っていく」

――商社の話が出たが、何か具体的に考えているものはあるか。

「『白石宝商』という会社を新しく作ろうと思っている。資源といっても石油から天然ガスなど色々あるが、うちは希少価値のある資源を扱っていく。その中には金や銀があればダイヤモンドもあり、ファッションジュエリーだけでなく半導体の部品などに使われる工業用の貴金属なども視野に入れている。会社は日本ではなくシンガポールかインドに作る」

――5月の香港オークションは大変盛況だったと聞く。

「全体的に大成功だった。香港は今年11月にも開催予定。今回のオークション開催に際し、アジア各国の代表的なオークションハウスらと業務提携を締結した。これから資本提携に入っていく。彼らと連合を組むことでより大きな事業へ発展させていきたい」

――主力のジュエリー・アート・オークション以外の事業はどうか。

「利益重視の経営になっていくと不採算事業はやはり縮小せざるを得ない。ヘルス&ビューティー事業、スポーツ事業に関してはNEW ART総合研究所という1つの枠組みの中に入れて資金面などをサポートし、そこで1本立ちできる強い体質になったら外に出すという戦略に切り替えた。あとは軽井沢リゾート開発事業。今までは建築とアート、グルメをテーマに構想していたが、ここに最先端デザインを走ることのできるブランドの誘致を加え、食とおしゃれと宿泊施設を整える。これを軽井沢芸術文化都市推進協議会のプロジェクトの1つとして進め、旧軽井沢に最先端の発信地をつくる」

――最後に配当について。前期は普通配当70円に感謝特別配当を加えた年100円だったが、本決算発表時の今期予想は年70円となっている。

「前期は第1四半期の終了を待たずして感謝特別配当を発表してしまい、少なくとも第2四半期が終わったぐらいに発表すべきと叱られてしまった。なので今年はその通りにしようと基本配当だけ発表したら、今度は配当が下がったと言われている(笑)。既に情報発信している通り、今期の感謝特別配当については専門家の意見も入れて第2四半期の決算発表後に速やかに発表したいと思っている。前期に不採算部門の整理を完了させたことで、今後3~5年の業績は大きく成長できるものとみられ、株主の皆さまには引き続き応援していただければありがたい」