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インタビュー2024年11月14日

バイオベンチャーの雄 ペプチドリームの戦略と展望 金城聖文取締役副社長CFOに聞く(上)

世界的に注目される次世代がん治療「RI」で先行

バイオベンチャーの雄、ペプチドリーム(4587・P)が「技術力×新たな医療ニーズに対応する事業戦略」で新たな成長ステージを迎えている。13日発表の2024年12月期第3四半期(1~9月)は売上収益416億円(前年同期比84.5%増)、営業利益245億円(同3.6倍)。通期は営業利益201億円(前期比2.9倍)と過去最高更新見通しと好調だが、開発ステージを踏まえればこれはまだまだ“序の口”。同社の金城聖文取締役副社長CFO=写真=に事業戦略や今後の展望などを聞いた。

――2022年開始のRI(放射線医薬品)事業が業績成長をけん引している。RI事業を始めた理由。
「当社の歴史とかかわるため、これまでの足跡を簡単に話したい。設立は06年。そこから数年かけて『PDPS』(ペプチド医薬品の素を迅速に見つけるプラットフォーム)を開発し、製薬会社の創薬を支援してきた。パートナーの製薬会社と開発プログラムは順調に増え、良いデータも出ていたが、フェーズ1、フェーズ2と進めるかどうかの意思決定権は相手が持つ。優先順位を下げられれば、当社はただ待つしかなく、もどかしい状況が続いた」

「このためパートナーに依存するビジネスモデルだけでは、次の成長を描くのは難しいと判断。リード・パトリックが社長就任した17年から次なる成長戦略の検討を重ねた。結果、パートナーが手掛けてなく、かつ、強みのPDPS技術が生きる領域として『RI』に着目。RIを手掛けるPDRファーマの買収を21年に発表、22年に手続きを終えた。PDRファーマは開発から製造販売までの機能を持つ“フルの製薬会社”。こうした機能を持ち自社である程度コントロールできるRI事業と、開発コストのかからない創薬開発事業の両方を行う『ハイブリッドモデル』に移行した。RIは取り扱いにあたっての規制環境が厳しく、国内で手掛けているのは2社のみ。国内主要製薬にとっても参入ハードルは高く、バッティングしないため創薬開発事業に悪影響はないと判断」

――RIの利点。
「RIとペプチドは相性が非常に良い。当社はRI-PDCと言っているが、PDCはペプチド・ドラッグ・コンジュゲートの頭文字。第一三共の話題のがん治療薬『エンハーツ』は、ハーツー(HER2)をターゲットにしたADCで、『A(アンチボディー、抗体)』に『D(ドラッグ、薬)』を『C(コンジュゲート、結合)』させ、抗体が狙った細胞や組織にピンポイントで薬物を届ける。この『A』をペプチドの『P』に置き換えたのがPDC。RI-PDCでは、ペプチドがRIを目的のがん細胞に運ぶことによってがん細胞を殺傷する」

「また、RIにはいわゆるパテントクリフ(特許の崖)の影響が限定的。RIを取り扱えるジェネリック会社がないため。ひとたびマーケットに入れば、長期間キャッシュカウになり、収益性が極めて高い。厳格な規制環境がゆえに、参入障壁も非常に高い」

――世界市場でRIはどうみられているか。
「RIは18年に黎明(れいめい)期を迎えた。最初に目を付けたのがノバルティス。ほとんどの製薬会社は様子見だったが、18年に米国で承認されたノバルティスのRI『ルタテラ』がグローバルで大ヒット。既存の治療で治らなかったがんがどんどん治ったことから、当初想定を大幅に上回る売り上げを記録。これを機に多くの製薬会社が関心を持つようになった。続いて22年に米国承認されたノバルティスの前立腺がん『プルビクト』がメガブロックバスターとなった。これが決定打となってRI買収合戦が始動。イーライリリー、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、アストラゼネカなどグローバルの大手製薬がRI領域に何千億円もの資金を投下、ノバルティスもさらに買収を積み重ね、RI領域だけで1兆円以上のM&Aを実行した。これほどM&Aが活発な領域は少なく、今年1月にJPモルガンのヘルスケアカンファレンスでもRIが大きく取り上げられるなど、非常にホットな領域となっている」

「実は、当社はノバルティスやもともと放射性診断薬を手掛けていたバイエルなどと共同研究していたことから先行してRIの潜在的ポテンシャルを認識。21年にPDRファーマの買収を発表した。ようやく時代が追い付いてくる中、先行者利益の最大化に向けて懸命にパイプラインの充実を図っている。今年10月1日に発表したRI企業の仏キュリウムとの戦略的提携もその一環だ」

――RIの主なパイプライン。
「現在、フェーズ3が4製品。フェーズ1が3製品、今後フェーズ1に入るものが4製品。これらは買収前の時点で臨床入りしているものは一つもなかったが、買収後、一気に開発が進み、パイプラインがそろってきた」

「フェーズ3のうち、悪性脳腫瘍の治療薬は早ければ27年に上市予定、キュリウムから導入した前立腺がんの診断薬・治療薬は28年から29年にかけての上市を目指す。前立腺がんはノバルティスのプルビクトと同様の作用機序。その後は、肝がん治療薬・診断薬、腎がん治療薬・診断薬を30年、31年といった時間軸で上市を狙う。つまり、27年以降、平均的に年1つずつ以上のペースで新製品を上市していく姿を目指す」

※次回は11月22日付当コーナーに掲載予定