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トップ記事2023年10月31日

レオス・キャピタルワークス 「ひふみ目論見倶楽部」発足 藤野英人 代表取締役会長兼社長 最高投資責任者

アクティブ運用のあり方、再定義 資産配分を再構成

岸田文雄内閣が資産所得倍増プランを掲げ、来年からNISA(少額投資非課税制度)の拡充を控える中、資産運用会社への注目が高まっている。こうした中、アクティブ型投資信託「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークスが「ひふみ目論見倶楽部(愛称ミーモ)」を発足させた。10年後の未来を専門家などとコミュニケーションして予想し、長期的な目線で意思決定し、長期的なパフォーマンス向上を目指すもの。発案者の藤野英人・代表取締役会長兼社長 最高投資責任者に“目指す姿”などを聞いた。

――ひふみ目論見倶楽部発足の背景。

「世の中は変わった。それに合わせて運用のあり方を激変させなければと考えたのが背景」

「一つはインフレ。当社はこれまで中小型成長株でパフォーマンスを上げ、ある意味、デフレの勝ち組といえるが、インフレ社会になればゲームの仕方が変わり、大型株が強くなる。もう一つがAIの台頭だ。いわゆるコンセンサス予想から上振れるか下振れるかはAIが瞬時に判断し、AIと自動取引を組み合わせたアクティブ運用とインデックス運用の間をとるようなAI運用が活発になろう。こうなるとアクティブファンドのアナリストも四半期、半年、1年先の業績を予想し、それに賭けるような運用はワークしなくなる」

「こうした激変期に僕らはどう生きるべきか熟考し、結果、目線を超長期にすることにした。ただ30年ではほぼ冗談の世界になるため、考え得る最大限である程度精度を高く見られる『10年』の目線で投資する。今まで銘柄の話はほとんどできなかったが、10年後にソニーやトヨタがどうなるのかという話ならば自分も発信でき、多くの人と議論できる」

「アナリストという人は、僕が社会人になった時、野村総研や大和総研などにいた。そこで先生と呼ばれ、名刺に研究員と印字されていた。研究員は業界展望やテクノロジーなどについて深いレポートを書き、レポートをもとに各業界の社長と議論していた。それが、収益目標が設定され、証券会社の下につき、この30年間で業績の予想屋になっていった」

「僕らは『投資機能付きシンクタンク』になっていく。未来についてディープに研究して考え方を提示し、それを内外の専門家と議論して企業経営者にぶつけ、未来を提示する。提示した未来を議論し、明るい未来をつくっていく経営者と共に投資する世界観をつくりたい。そういうひふみに投資されたいという相思相愛の会社だけに投資すれば、結果的に良好なパフォーマンスになるのではないか。アクティブ運用のあり方を『リスクを取ってリターンを取りにいく』ものから『未来を提示し未来を選択し未来を創造する』に変えることで、インデックスファンドやチャットGPTにも引けを取らない存在になれるように思う」

――検討テーマは、テクノロジー&サスティナビリティ、ソーシャルインパクト&ヘルスケア、グローバルエコノミー&地政学の大きく3つ。実際の投資は、①日本の未来を切り拓く日本のリーディングカンパニー「ザ・プライム」が60%程度(時価総額1兆円以上の上位企業群から20~30社程度)②未来の日本のリーダーになる成長群「ネクスト・ジャパン」は10~15%(時価総額1,000億~1兆円企業)③10年で10倍になるかもしれない「テン・バーガーズ」は10%(時価総額1,000億円以下)④米国・中国などを中心に日本にはないビックリのある会社群「グローバル・スターズ」10%――の4分野に分けて行う。

「大型株は20~30銘柄に絞って重点投資する。ここは例えばNTT、KDDI、ソフトバンクを少しずつ買うのではなく、通信ならA社としっかり決めてリスクを取っていく。変化を捉えれば非常に高いリターンを取れるのではないか」

「例えば、2000年に『楽天が三越の時価総額を超える』と言ったら誰も信じなかっただろうが、今は逆。三越伊勢丹の時価総額が10年後に楽天を抜くと言ったらそちらがあり得ないとされよう。ただ、インフレということはひょっとするとそういう時代が来るかもしれない。そういうことを提示して議論するのが面白い」

直近IPOは「バルク買い」のチャンス

――テンバーガー。ここも面白そうだ。
「10倍バーガー。もともとピーター・リンチがテンバガー(10倍株)といったのだが、それをオマージュした」

――ここは藤野さんがもともと一番得意としているところです。

「ここは磨いていく。ひふみ投信シリーズの運用資産残高の約10%を時価総額が今は小さくとも今後何倍にもなるのならベットする。時価総額が小さいから投資されず悔しがっている銘柄、全部来いと。特にこの3年程度で上場した銘柄は株価が低迷しているが、低迷時期は必ずある。今はバルク買いのチャンス」

――ひふみ目論見倶楽部に対する反応はいかがでしょうか。

「社内でも『また藤野さんが何やら始めた』とみている人も大勢いる。それは当然で自然なこと。社内のスラックでハートマークを付けたりしてくれた社員もいるが、社員は約120人。120個ないとおかしいが、25個ぐらいなんですね。そのうち読まずに付けている人がいるとすれば15人ぐらい。彼らが集まり、社内にどのように浸透させるか話し合いになった時、いきなり120人は難しいだろうから、15人が一人ずつ説得しようと。そうすれば30人になり、その後40、50人と増えていこう。場合によっては『ひふみ目論見倶楽部 入部募集中』と書いた貼り紙をし、来てくれたら新歓コンパしようかなど、そのような感じで広げていこうと思っている。参加を強制するのはそもそも趣旨に合わない。倶楽部の絆が強まり運動体になればそれは社外に伝わり、目指すアクティブファンドにより近づく。実現に向けてリクルーティングも行っている」

――預かり資産は1兆円を超える。

「よく『運用資産残高が多いので運用が難しくなるのでは』と言う人もいるが、それはマーケットのアヤを取りに行くのが運用と思っているからなのだろう。そうではなく、お金を正しく、良い意味で影響力を行使するという方に考えていけば残高は世の中を変えるパワーになる」

「最近、個人的にとても努力していることがある。無人レジにさっと行き、できるだけ早く会計することに夢中になっている。10年後には無人レジが普通になり、有人レジを利用すると『おじいさんね』と言われる時代が来る。人口減少、人手不足により今後多くのサービスが無人化し、人間がサービスするのは客単価1万円以上で、客単価1万円以下は全部ロボットが行う社会になると考えた方がいいとみている。そうした社会に備えて僕らはどう生きていくか、そうした社会の中でどのような幸せを求めていくか、もしくは、そういう社会が来たときに僕らがお金を使ってそこまで極端ではない社会を目指していくことも僕らの役割ではないかと思っている。より多くの仲間とともに明るい未来をつくっていきたい」(Q)