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銘柄・相場情報2023年9月21日

企業研究 あらた(2733・プライム) 機関投資家が注目する「安定成長」銘柄

成長加速、中期経営計画「売上高1兆円」前倒し

【事業内容】国内最大級の日用品・化粧品の卸商社
あらたは約1200社のメーカーと取引があり、扱うアイテムは約10万。仕入れた商品を、自社の物流センターなどで在庫として持ち、注文を受けて小売業社に販売する。販売先は約3,500社・約4万5,000店舗ある。

商品を、小売業者を通じて全国の消費者へ届けるために「集約・分散」することが卸売業者の役割。シンプルだが重要だ。卸売業者が存在しないと1,200社のメーカーと約3,500社の小売とがそれぞれ取引をすることになり、その回数は掛け算されて420万回にも上る。ところが間にあらたが入ることで「足し算」に変わり、取引数は4,700回へ激減する。

「業務効率化」のみならず「マーケティング」まで支援
卸売業者として、あらたに求められる役割は単に取引の回数を減らすだけでなく、扱う10万アイテムを1年365日、効率よく・間違いなく日本全国へ届けること。

自社施設内では箱のサイズやバーコードを読み取り仕分けを自動的に行うなど、先端技術を導入してサプライチェーンの「効率化」を高めている。AIについては消費者や販売先の需要予測にも導入しており、在庫管理のほか人材の配置にも活用している。

さらに「化粧品が売れ始めている、新型コロナウイルスの感染法上の分類が引き下げられたため」「特にアイメイク関連商品が人気なので、売り場のレイアウトはこのように」などと、国内最大級のプラットフォームで集積された「情報」も併せて販売先に提供している。

【業績推移】10年で売上高は1.4倍、経常利益は3.8倍に
売上高は前2023年3月期までに8期連続の過去最高を達成。経常利益も、前年の消費税増税前の駆け込み需要に対する反動減であった15年3月期を除けば右肩上がりが続いている。

8月7日に発表した24年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比6.9%増だったのに対し、経常利益は同23.9%増と、利益率が大きく伸びていることが確認されている。

2020年に策定した長期経営ビジョン2030では「30年3月期までに売上高1兆円突破」を掲げていたが、23年5月に策定した「中期経営計画2026」で目標を前倒しして、26年3月期に売上高1兆円、経常利益200億円を達成するために、これからの3年間で成長を加速させることを明言している。

具体的には、売上高の31.2%を占める「ヘルス&ビューティー」、同19.9%の「ペット・その他」の2事業は単価が高く、さらなる利益率向上が見込めることもあり、自社ブランド開発を含めた商品拡充を強化する。

【株主還元】増配9期連続を計画、優待も年2回実施
株主への還元にも手を抜かない。配当については今期も9期連続となる増配を、前期実績の年間136円から166円への引き上げを計画する。優待としても年に2回、1,000円分のクオカードを贈呈している。

株価は5,000円台で最低購入金額が50万円を超えるため、投資家から株式分割の可能性を聞かれることは少なくない。投資家の数を増やすためには有効だと感じているものの、事業を拡充させて会社そのものが成長することも重要な還元策のひとつ。バランスを見ながら進めていく。

【ポジション】業績は上位、「認知度」向上さらに強化
上場企業は約4,000社あるが、業績面から見たあらたの順位は23年8月末現在、売上高は上位5%程度、経常利益は15%程度に位置する。割と規模の大きな会社だと言えるものの、時価総額は上位22%程度にとどまっている。

数字的な株式市場での存在感が時価総額、つまり、株価にはまだ反映されていない。だからこそ当社は個人投資家向け会社説明会などを通じて多くの方に、あらたのことを知ってもらう活動を大事にしている。

ちなみに機関投資家からの支持は高い。株主の構成を見ると16年3月期は5%だった外国人投資家が、23年3月期には22%にまで高まった。個人投資家についても比率は50%から33%にまで低下したものの、数は3,090人から5,080人に増えている。

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本稿は9月1日に京都市内で開催された個人投資家向け会社説明会におけるあらた鈴木洋一副会長の講演内容からポイントを抜粋したものです。数値など全てのデータも講演時点のものになります。