官公庁は防衛土木業務が堅調
まちづくりや都市基盤整備を担う総合建設コンサルタント、オオバ(9765・P)の業績が好調だ。
2月21日開催の個人投資家向けIRセミナーでは、辻本茂社長、片山博文常務執行役員が同社の強みや成長戦略を語り、好実態が鮮明になった。国土強靭(きょうじん)化や日本企業のものづくり国内回帰などを追い風に、営業利益は2023年5月期まで12期連続増益で推移。配当や優待など株主還元にも前向きで、財務強化で有利子負債もゼロとするなど成長路線を確かなものにしている。
まちづくり業務が強み
オオバは鉱山鉄道や港湾などの測量事業を目的に1922年(大正11年)に創業。「誠」「積極進取」「和」を社是に2022年、創業100周年を迎えた。オオバは計画・調査から設計、土地管理など工事に至る前段階の黒子的な役割を担う。
強みであるまちづくり業務では福祉、防犯・防災、にぎわいなど、様々な角度の魅力を持ったまちづくりの企画・提案に携わるコンサルティングを行っている。ほかに、設計部門は道路、橋梁(きょうりょう)、上下水道など単体の設計はもちろん、まちづくり事業や環境対策などと連携しトータルでまちづくりを提案している。環境部門では土壌汚染対策、水質保全や産業廃棄物処理に配慮した環境施設計画、エネルギーの循環計画などでの問題を具体的に解決する技術を持つ。地理空間情報部門では最新IT機器を駆使した測量などを行い、そのデータをまちづくりに活用している。土地の現状確認や測量、ボーリング調査の代行、インフラの維持管理サービスを幅広く展開する土地管理部門や、業務の省コスト化と効率化につなげる地理情報システム(GIS)の開発部門などもある。
民間、官公庁とも順調
業績に関しては、今24年5月期第2四半期(1月12日に発表)は増収増益で利益率も改善し、好決算だった。売上高は前年同期比15.1%増の70億8,900万円。営業利益は5億6,400万円で、前年同期比31.9%増。売上高営業利益率も前年同期の6.9%から8.0%へ改善した。受注高の合計は101億3,300万円で、前年同期比2.9%の増加。民間が好調で受注高、手持ち受注高とも前年同期比で伸長した。区画整理、開発行為、一般コンサルのいずれも堅調に推移。一般コンサルでは大型案件の「川崎とどろきパーク」を受注した。連結子会社も前年同期と比べて伸長し、昨年5月に完全子会社化したオオバ調査測量が今期から寄与している。
官公庁については、社会課題解決に向けて防衛土木への取り組みを強化し、北海道、北関東での自衛隊施設の最適化に伴うマスタープラン作成業務などを共同企業体で受注した。
今期末には借入金ゼロ
キャッシュフローに関しては、これから下期後半にかけて売上債権の回収が進み、改善していくことから今期末には借入金がゼロとなり、現預金残高も前期末より増加する見通しだ。今24年5月期の通期計画では、官公庁については老朽化した社会インフラの維持管理、国土強靭化、防衛土木への対応など公共投資が引き続き堅調に推移している。民間については生産拠点(ものづくり)の国内回帰と、海外資本の参入による産業用地・物流用地開発支援業務など民間需要の増加により引き続き好調な受注環境を予想。例を挙げれば、熊本のJASM/TSМC(台湾積体電路製造)1期工場、隣接するソニーセミコンダクタの工場建設に絡む開発許認可・土木設計業務受注などがある。
株主還元にも積極姿勢
オオバは昨年7月に発表した中期経営計画と併せて、株主還元の強化を打ち出した。同社の成長とともに収益力と技術力が着実に向上し、財務強靭化により無借金体質を確立させたことから、28年5月期までの5カ年計画で総還元性向を60%程度(前23年5月期は54.5%)、配当性向は50%程度(同36%)をめどに引き上げる。具体的には今24年5月期の中間配当は17円、期末配当予想は17円とし、年間配当予想は34円(同24円)とした。28年5月期の定量目標には、売上高200億円、連結営業利益24億円、連結営業利益率12%、ROE(自己資本利益率)12%、ROIC(投下資本利益率)12%を掲げている。
充実した株主優待もある。1,000株を1年以上保有する株主には7,000円のクオカードを進呈。2,500株以上保有の株主には福祉チョコレート工房ショコラボの菓子を贈るなど、魅力的な株主還元に配慮。配当と合わせた株主重視の姿勢を打ち出している。