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銘柄・相場情報2024年7月12日

企業研究 キッズウェル・バイオ 「こども」に着目した創薬ベンチャー

バイオシミラーで安定収益、細胞治療で「躍進」

バイオシミラー(後続品)事業と、細胞治療(再生医療)事業の2事業に取り組むキッズウェル・バイオ(4584・G)。2001年に北海道大学発の技術を用いてバイオ医薬品の研究開発活動をするために設立された。現在は、本社を東京に移転し、「こども」に着目した医薬品研究開発を行う創薬ベンチャーとして活動を続けている。

【強み】バイオベンチャーながら安定収益を確立
既にバイオシミラー事業において安定した収益基盤を確立できていること、そのうえで細胞治療事業が大きな成長性を秘めていることが同社の強み。

いわゆるバイオベンチャーの収益構造は3段階ある。①一定程度に研究や開発を進めた上で、パートナーとなる製薬会社と契約を結んだ際に得る「契約一時金」、②以降は開発をリードしていき、その進捗によって得る「開発マイルストン収入」、③無事に上市されれば、その後は原薬の供給、ロイヤリティといった安定収益が発生するのだが、同社については既にバイオシミラー事業において4製品で③を獲得している。

比較的開発のハードルが低いバイオシミラーと、ハードルが高い細胞治療事業とでは当然リターンも異なる。ハイリターンが見込める細胞治療事業についても今期中のパートナー契約を目指す。

事業① バイオシミラー 4製品上市実績に基づく圧倒的ノウハウ、競合追随なし

バイオシミラーとは、先行医薬品と同等性・同質性のある成分を持つバイオ医薬品のこと。先行品の特許が切れた後に、ほかの会社から世に出されるジェネリック医薬品と、存在理由は似ているが、ジェネリックが化学合成で作る低分子医薬品からできているため製造工程をコントロールできるのに対して、細胞や微生物などにより生産されるバイオシミラーはコントロールが困難という大きな違いがある。

バイオ医薬品の研究開発から上市までには高度な技術・ノウハウが不可欠で、これが薬価にも反映される。日本国内の多くの製薬会社が一時期、安価な低分子医薬品に特化した時期もあったが、同社はグローバル大手が主力とするバイオ医薬品に特化して事業を推進し続けてきた。

結果、同社内に蓄積したバイオ医薬品のノウハウ、人材を活用したバイオシミラー開発を進め、現在ではパートナー製薬会社による臨床開発が実施されたバイオシミラーは、4品目全て国内市場における一番手として上市している。

同社が開発したGBS-001、GBS-011は、先行品からバイオシミラーへの置き換え率が他社バイオシミラーも含めて8割を超えている。昨年、上市したGBS-007と、適応症追加を達成したGBS-010については現時点では競合品の承認はなく、今後のシェア拡大が期待される。

事業② 細胞治療(再生医療) 「乳歯」由来のSHEDを世界へ

同社が扱うのはSHED(シェド、乳歯歯髄幹細胞)、こどもの乳歯から取れる細胞だ。こどもから得られる若い細胞のため増殖能力が非常に高く、自然に抜ける乳歯を利用するため国内でも安定供給できる、などの特徴がある。同社ではドナーの募集から細胞の培養・保管までとSHEDの安定供給体制を確立し、昨年度から脳性麻痺をターゲットとして名古屋大学で臨床研究が開始されており、既に一部の患者への投与が行われるなど、臨床開発ステージに入っている。26年3月期中の治験申請を目指して、今期中には開発のパートナーとなる製薬会社との提携を想定している。

【成長戦略】
バイオシミラー事業において先ごろ抗体医薬品を手掛けるカイオム・バイオサイエンス(4583・G)と業務提携を結んだ。ノウハウと人材を連携させて5製品目以降の開発を目指す。

バイオシミラー事業は先行品の特許切れ増加に伴って、市場規模は2020年の約903億円から2030年には約1,242億円へと拡大することが期待されている。再生医療分野についても2025年の約3.8兆円から2040年に約12兆円と大きく成長する中で、当社はバイオシミラー事業における5製品目以降の開発、そしてSHED創薬のトップランナーとして、「こども」を取り巻く全世代に向けた医薬品研究開発活動を促進していく。

本稿は7月10日に東京都内で開催された個人投資家向け会社説明会におけるキッズウェル・バイオ代表取締役社長紅林伸也氏の講演内容からポイントを抜粋したものです。

「バイオIR Day@東京」開催 バイオ4社の社長とアナリストが登壇

バイオベンチャー4社の社長が事業紹介と成長戦略を語り、現役アナリストが深掘りをする「バイオIR Day」が7月10日に東京・茅場町で開催された。130人を超える個人投資家が集まり、企業に直接、質問ができるブースも用意された。

パネルディスカッションを除く会社プレゼンについては後日、視聴用の動画を公開予定。詳細は日本証券新聞のYouTube公式チャンネルで案内します。

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