株主還元「強化」策も
企業のIT投資に一気通貫で支援するヒューマンクリエイションホールディングス(HCH、7361・G)の株価が堅調だ。昨年11月に新たな中期経営方針と同時に株式分割と自己株消却、さらに同12月には自己株取得を発表したことで、蓋然(がいぜん)性の高さが好感されている。
【事業内容】M&Aで領域・業容拡大「一気通貫」を実現
システム開発は要件定義に始まり、設計、開発、実装、テスト、そして納品後は保守・運用と様々な段階がある。ヒューマンクリエイションホールディングスはこれら全ての工程について「一気通貫」で対応することが大きな特徴だ。
1974年の創業時からしばらくはSES(システムエンジニアリングサービス)と呼ばれるエンジニア派遣が主力だった。2016年に富永邦昭社長が参画して以降は方針を転換。19年7月に子会社アセットコンサルティングフォース(ACF)を設立して受託開発領域へと参入した。
19年10月にはインフラの保守・運用を手掛けるセイリングを、21年10月には、既にコンサルティング領域で実績を持つヒューマンベース(HMB)を買収するなど、その後はM&Aを駆使して領域と業容の拡大を続けている。
【競合差異】大手不在、規模を絞ったニッチ戦略で存在感
一般的に、SIerはシステム設計・開発やプロジェクト全体の進行管理などを行い、これらの実装はSESを通じて割り当てられたエンジニアが行う。加えて保守・運用の専業会社など業界内には競合が多数存在するものの、HCHのように全行程を一気通貫して対応できる企業は、大手SIerなどごく一部に限られる。
HCHについては大手SIerと協業関係を構築している。同社が身を置くのは「ボリュームニッチ」市場。大手SIerがターゲットとはしない3億円以下の案件を積極的に手掛け、それ以上の規模についてはSIerから一部を切り出してもらうことで協業する。23年2月には日鉄ソリューションズ(2327・P)と資本業務提携を締結。リリースには、日鉄ソリューションズが取り組むプロジェクトに対して「5年以内の参画規模の大幅拡大を図る」と記載されている。
【足元業績】24年9月期は売上2ケタ成長も計画未達、巻き返しへ
24年9月期は売上高、営業利益ともに計画未達となった。売上高は前期比10.5%増も計画比92.0%の71億6,500万円、営業利益は前期比90.4%・計画比88.0%の6億3,100万円。前期は大型案件が発生しており、そこからの反動減に加えて、会社側は「新規M&A貢献が限定的だった」と、失速の要因を分析。加えて「ギアの入れ替えが必要」として、中期経営計画を修正し、新たに「中期経営方針」と「新財務戦略」を発表している。
<創出キャッシュを効率的に再投資・株主還元に振り向け>
今25年9月期からの3年間を「業容拡大にこだわるセカンドステージ」と位置付け、一気通貫ビジネスモデルの構築を目指したファーストステージに引き続きM&Aを駆使した業容拡大にこだわる。
◆具体策① 27年9月期売上高1.7倍増120億円へ
26年9月期の売上高を110億円達成と掲げていたが、“新”中期経営方針として「27年9月期120億円」に修正した。このうち戦略領域(コンサルティングなど上位行程)は50億円と、24年9月期実績比で2.28倍増を目指す。
◆具体策② 自己資本比率40%以下、超過分は株主に
財務資本戦略の方針を追加した。キャッシュは中長期的な収益拡大・成長に充てるが、M&A案件が現れないなど4四半期連続で自己資本比率が40%を超過する見込みとなった場合には、自己株取得など株主還元を追加で実施する。
さっそく昨年11月の戦略発表と同時に、自己株消却(消却前発行済み株式総数の7.27%)と株式分割(1:2)、さらに同12月には自己株取得の実施を発表している。
◆具体策③ 30年9月期EPS1,000円を目指す
28年9月期からの3年間は「投資回収の3rdステージ」。セカンドステージで立ち上げた中期経営方針と財務資本戦略の下、EPSについては24年9月期実績246.23円から4倍増の1,000円を目指す。EPS1,000円達成までの道筋については、過度に資金を滞留させない、M&Aなど再投資を強化する、M&Aシナジーを創出する、各子会社で持続成長をする、の4点を挙げている。