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コラム2023年1月26日

企業研究 メディカルネット(3645・G) 医療×インターネットを「歯科」から深掘り&発展

先ごろ2023年5月期の第2四半期決算を発表したメディカルネットに注目したい。営業利益が予想を上回って着地したものの、翌日の株価は終値ベースで4%近く下落している。売上高が予想を6%程度下回ったこと、会社側が通期予想を据え置いていることなどを投資家はどう受け止めるべきか。基本に立ち返ってみたい。

【事業内容】歯科クリニックを全方位サポート
セグメントは3つ。1つ目は「メディア・プラットフォーム事業」。生活者が歯科医院を検索する「歯医者さんネット」から、専門知識を扱う「インプラントネット」までと複数のポータルサイトを運営する。こちらが医者と生活者をつなぐBtoC事業であるのに対して、2つ目の「医療BtoB事業」では歯科医療従事者と製薬メーカーまたは歯科関連メーカーとをつなぐ展示会や勉強会といったイベントを開催したりマーケティング活動を行ったりしている。

そして3つ目は「医療機関経営支援事業」。ホームページ作成といった集患、機材販売、あるいは事務長代行までと歯科クリニックを支援。歯科はほかの領域と異なり大部分の医師が独立する。開業資金は5,000万~7,000万円程度かかり、この際の不動産の手配のみならず、診療に専念させるべく経営は当社がサポートするといった建て付け。

特に「メディア・プラットフォーム事業」は利益率も高く同業はいくつもあったが、多くが撤退した。当社は歯科に特化した専門性と、全方位サポートで培った歯科クリニックとの深いリレーションが強み。

【中期経営計画】DX化など成長余地は十分
25年の売上高100億円(※)に向かってまい進中。達成確率について機関投資家などから質問を受けることが多く、そのたびに「自信はある」と答えている。(※23年5月期は45億円を予想、22年5月期の実績は37億4,500万円)

当社が目指すのは楽天経済圏ならぬ「メディカルネット経済圏」。まずは“歯科のことなら何でもメディカルネットへ”というネットワークを構築中で、現在は多数の会社に仲間入りしていただいている状況。例えば18年に株式取得した歯科器材大手商社オカムラは東京地盤の会社だったが昨年5月に大阪拠点を立ち上げた。クリニック営業はいまだに直接訪問・口頭対応が主流のアナログな世界だが、年間4,000億円程度の規模があり、ここのDX(デジタルトランスフォーメーション)化を当社が先導する。

【歯科業界展望】虫歯治療から「口腔」で全身健康へ
歯科クリニックは全国6万8000軒とコンビニエンスストアよりも多いといわれる。しかし虫歯治療のみならず近年は「口腔」が全身の健康に直結することが注目されるなどポテンシャルが非常に大きい領域でもある。

当社は岡山大学と口臭センサーに関する特許を共同で取得しており、これは、口の中の水分から、たとえば量で緊張の度合いを測ったり、遺伝子など生体情報をモニタリングすることで病気の予兆をキャッチするといった使い方を想定している。

オンライン診療にも着手している。アイリッジ(3917・G)と組んで口腔内カメラを活用した歯科向けオンライン診療のシステムを開発。この技術をベースに現在はNTTデータ研究所や東北大などとの研究を厚生労働省からの委託事業として進めているところだ。

咀嚼(そしゃく)力と認知症との因果関係も研究されている。口臭センサーの特許はあくまでファーストステップに過ぎず、将来的には未病予防の世界でも先導役になることを目指す。

【海外展開】タイで上場を準備中
現在グループは関連会社を含めて10社、うち5社がタイのバンコクにある。3軒の歯科クリニックを経営するほか、日本と同様のプラットフォームを構築するため、22年3月に歯科総合商社事業を行う会社を取得済み。現地での上場も準備中だ。その先にはマレーシアやベトナムなどでの横展開もイメージできるが、ひとまずタイでの基盤づくりに集中する。

※本稿は2022年11月に日本証券新聞社が開催した個人投資家向け会社説明会における同社の平川裕司代表取締役社長COOによる講演内容をベースにポイントを抜粋したものです。