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銘柄・相場情報2024年8月15日

企業研究 高炉3社 日本製鉄 上方修正 USスチール買収にも自信

JFE 下方修正 神戸鋼は関連で強含み

6月に期末、四半期末を迎えた企業の決算発表が終了した。決算シーズン最中の5日には、日経平均株価が4,451円安と歴代1位の下落を記録するなど、大きな波乱に見舞われた。パニック的な売りを経て、相場の修復も進み始めた。需給面での混乱を抜けた後はやはり、ファンダメンタルズに目が向く。4~6月期は為替相場がドル安円高で推移したこともあり、輸出関連企業を中心の企業業績は堅調だった。通期の業績見通しを増額修正する企業も予想以上に多く、収益環境は悪くないようだ。今回は素材関連の中から、高炉3社に注目してみたい。収益環境は厳しいものの、別表に掲げた通り、配当利回りなど投資指標はいずれも魅力的な水準にある。

高炉3社の投資指標
コード 5401  5411 5406
銘柄 日本製鉄 JFE 神戸製鋼
PER(倍) 8.9 5.9 5.5
PBR(倍) 0.63 0.49 0.63
配当利回り(%) 5.0 5.8 5.3
配当金(円) 160 110 90
※14日時点

最大手の日本製鉄(5401・P)は2025年第1四半期(1Q、4~6月)の売上収益が前期比0.4%減の2兆1,915億円、事業利益から在庫評価差などを控除した実力ベースの事業利益が同22.0%減の1,950億円と減収減益だった。

通期についても厳しい経営環境を想定しているものの、鋼材需要は内需が厳しい一方、輸出で減少分をカバーし、ひも付きと呼ばれる大口需要家向けでスプレッドを確保できている。同社が得意とする高付加価値品の電磁鋼板など拡大、継続的なコスト削減などの寄与が見込まれる。通期の業績予想は上方修正されている。売上収益は前期比0.8%減の8兆8,000億円(従来予想と変わらず)、実力ベースの事業利益は同16.5%減の7,800億円(従来予想は7,500億円)となる見込み。

中長期経営計画の最終年である26年月期には実力ベース事業利益9,000億円以上を目指しているが、今期実施する構造対策効果400億円程度に加え、高級鋼などへの設備投資効果の発揮、インドなど海外事業などの拡大により確保に取り組む方針だ。

また、今回の決算ではUSスチール(USS)の買収に向け、様々な対策を実施し、実現に自信を示したことも注目されている。森高弘副会長兼副社長が州知事や政治家、USW(米国鉄鋼労働組合)の組合員などと面会、買収に対する理解が進んでいるとの認識だ。

JFEHD(5411・P)はどうか。1Qの売上収益は前年同期比4.0%減の1兆2,111億円、事業利益は同32.9%減の569億円だった。通期の業績予想は日本製鉄とは逆に下方修正となった。売上収益は前期比1.3%増の5兆2,400億円(従来予想は5兆3,900億円)、事業利益は同12.8%減の2,600億円となる。鉄鋼事業での数量減が響く。単独の粗鋼生産量は2,300万トンと前回予想から40万トン下方修正され、前期からは45万トン減る。一方、エンジニアリング事業は好調が続く。

神戸製鋼所(5406・P)は1Qの売上高が前年同期比1.3%減の5,907億円、経常利益が同2.4%減の350億円だった。鉄鋼、機械が堅調だったものの、電力事業がマイナスだった。通期では売上高が前期比1.3%増の2兆6,600億円、経常利益は同6.8%減の1,500億円と期初予想を変えていない。

同社の場合、大手2社と比較して鉄鋼のほかアルミ、素材、機械(建設機械・油圧ショベル)、エンジニアリングなど事業構成が多角的という特徴がある。鋼事業では自動車向けなどが厳しいものの、メタルスプレッドの改善などで計画線を確保できるもよう。アルミ板・素形材では半導体やHDD向けなどIT関連分野での販売が伸びる見通し。建設機械ではエンジン認証不正問題の影響が段階的に解消する見込みだ。

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