凄腕個人投資家で、中小企業診断士でもある井村俊哉さん。上場企業トップを直撃して魅力を探るシリーズ第3弾のお相手は、昨年12月にマザーズ上場したココペリ(4167)。ココペリの主力事業と言えば、中小企業経営支援プラットフォーム「Big Advance(ビッグアドバンス)」。これを、「SaaS(サービスとしてのソフトウエア)の成功例」と高評価する井村さんが近藤繁社長に、強みだけでなく当面の懸念などについても鋭く切り込んだ。
ちなみに井村さんは投資歴15年にして、ちょうど7月中旬の対談当日に累積利益10億円に到達。ここまでの道のり、ココペリ株の貢献も大きかったとか…。
――地銀や信金など導入金融機関が売ってくれて、両者でWIN―WINの関係を築いている「ビッグアドバンス」。会員の中小企業数は3月末で4万9,783社(前年は1万2,792社)と1年で4倍の激増ぶりだが、どこがウケているのか。
主要な機能のうち最も使われているのがビジネスマッチングだ。コロナ禍で営業手段や商品開発が厳しく制限される中でも、成長に向けた新しい販路や商品、パートナーの開拓に貢献しているのではないか。
――地域の金融機関の垣根を越えて、5万社近い会員同士でマッチングできることは大きい。
企業数が増えるほど出会いの機会も増える。ネットワーク効果からサービスとしての付加価値も高まっていく。
――マッチング数は。
月間で4,000件以上の依頼が来ている。昨春比で5~6倍になる。
――コロナは追い風?
コロナの影響は色々とあるが、オンラインサービスであるビッグアドバンスを活用いただける場面も増えてきていると実感している。
――だとするとコロナ収束で特需が消え巡航速度に戻れば、成長鈍化が懸念される。
どちらかというとコロナをきっかけに、これまでゆっくりと進んでいたDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速度的に動き出したととらえているので、コロナが収束してもその辺は変わらないと思う。例えば国土の広い米国ではある程度オンラインや電話で商談を進めたうえで実際に面会したりするが、日本はこれまで『会わないで商談を進めるのは失礼』という習慣もあったが、そのような文化も変わってきたと感じる。
――保守的とされる地方、金融機関の姿勢も変わったということか。
地方で金融機関が果たすべき役割が大きく変わっていくなかで、コロナ禍となり、企業が金融機関に求めるニーズもより明確になったと思う。そういった意味では、もともとコロナ前から金融機関の支店統廃合も進む中で、顧客とのコミュニケーション活性化手段としてビッグアドバンスのチャット機能が注目されていた。
――アフターコロナにもプラス面はあるのか。
金融機関が導入した後の、支店の企業向けセミナーの開催や取引先への同行訪問など、会員企業獲得へのリアルな働きかけが可能になる。
――今3月期75%増収予想に対し、利益の伸び率がいまひとつ、その背景は。
開発費のほか、エンジニア中心に大幅な人員増強を予定しているため採用費、外注も含めた人件費が膨らむため。
――新規事業のオンライン融資では、中小企業向けファクタリングなどの焦げ付きリスクをどう考えているのか。
オンライン融資はあくまでも金融機関が行うもので、われわれはその仕組みをテクノロジーで支援する立ち位置。ただ、『金融』をより深く知るために2年ほど前、当社社員2人と貸金業取扱主任の資格を取った。
――そこまでするのか!
がんばって勉強したかいあって一応3人の中で一番の高得点だった(笑)
――ビッグアドバンスを通じたM&A仲介などはニーズも高そうだが。
大手のM&A業者はなかなか小さい案件を手掛けないため、要望は非常に多い。本来、最も相応しい担い手は地域経済にコミットしている金融機関だが、これが進まないのは、県内や地域では相手先を見つけられないという面もありそうだ。ネットワーク性の高いビッグアドバンスならお手伝いできるかも。
――なぜやらない?
まだ、やらないとも、やるとも言えないが、いつかはやりたい。
――最後に、今後の事業に対する思いを。
中小企業にテクノロジーを届けようという思いで経営している。日本人の7割が働く中小企業には世界に誇れる技術や製品も多く、もっと誇っていい。中小企業の生産性向上が地方再生、ひいては日本経済の発展につながると考えている。