元お笑い芸人で、現在は個人投資家として8億円の通算利益を誇る井村俊哉さん。成長株投資が得意な井村さんが上場企業のトップに直撃して、魅力を探る。第1回は、昨年10月にマザーズに上場した勤次郎(4013)。加村稔代表取締役に好業績の秘訣を聞いた。
――約90億円と潤沢なネットキャッシュを有するというバリューの要素に加えて、グロースの側面も持っている御社。ストックとして積み上がっている顧客数や売上高を投資家が改めて評価する可能性が高い。中でも目を引くのが、見事なまでのクラウドへのシフトだ。既に成功しているオンプレミスからの転換に抵抗はなかったのか。
10年ほど前からクラウドに取り組んできた。システムを自前で抱えるオンプレだと初期投資が大きいので、顧客によっては導入をためらうこともある。当社にとっても、オンプレなら一括で回収できる金額が、クラウドでは3年半~4年かかってしまうのだが、その代わり、きちんと回転し始めるとクラウドほど頼もしいビジネスモデルはない。
――料金はどのように設定されているのか。
シンプルな労務管理系で1人当たり400円。さらにHRM統合ERP(人的資源管理系統合基幹業務システム)として保健師遠隔面談や労務コストマネジメントなどいろいろなオプションが100円、200円と追加されるしくみ。今年の7、8月ぐらいにはUI、UX(使い勝手や顧客体験)にこだわった“次世代”勤次郎を出す予定だ。
ちなみに中堅以上の新規ユーザーはオンプレの意向もまだ根強く、いったん『勤次郎』を知ってもらってから、設備投資が不要で定期的なバージョンアップが受けられるといったクラウドの良さが理解されて切り替わってくる、という流れ。
――顧客ニーズに応えてクラウドへと流れていった“自然体”なところが良い。クラウドの平均月次解約率が0.13%という低さも驚異的で、これは上場クラウド関連企業の中でもトップクラス!
26年間ソフトウェア開発を続けてきた当社の製品は完成度も顧客満足度も高い。シンプルな勤怠管理ソフトは他社も出しているが、『勤次郎』は、労使間の多岐にわたる約束事を盛り込み、法改正にも即座に対応する。特に就業は企業によって千差万別。それを満足させるのに26年間、苦労を続けてきたことが大きな財産になっている。解約される場合も事業の統廃合などが原因で、他社に乗り換えられることはまれ。
――確かな財産を元に、いち早くクラウドにシフトしたおかげで、他社に勝てる。販売はどのようにしているのか。
約7割が代理店、3割が直販。1ライセンス400円は直販価格で、代理店にはそれより安い価格で卸す。
――そこに「驚異的な解約率の低さ」が効いてくる!
『次世代勤次郎』については販売前に、代理店が自ら全面導入してくれている。自信を持って売れるように、と。せっかく契約をもらっても、すぐに解約、では、営業担当者のモチベーションは上がらない。
――代理店が自ら進んで勤次郎を売る、そんな代理店網の活用、メッチャ面白いですね! 彼らがこれから注力する『次世代勤次郎』とはどういうものか。
これまでも労務管理をベースにヘルスライフなど、いろいろなシステムを組み合わせて使ってもらっていたが、『次世代勤次郎』はオプションと“もっと自然に”触れてもらえるしくみとした。
国が健康経営を推進していることは強い追い風だ。働き方データと健康データを包括して労働生産性を向上させる活用は、これまでほとんど事例がなく、市場はかなり大きい。自社開発なのでコストも安く、5年ほどで『次世代勤次郎』に置き換わるとみている。
――『次世代勤次郎』に置き換わると顧客単価はもちろん…期待しております!
顧客企業の就業管理や健康経営を支援するソリューション「勤次郎Enterprise」を提供。3月27日に日通システムから社名変更したばかり。2021年12月期の業績は売上高44億1,500万円(前期比28.6%増)、営業利益8億2,700万円(同47.1%増)を予想。