“米銀破綻ショック”の余波収まらず。14日も日経平均610.92円安。3~9日に「5日間で1,124.28円高」となりながら、直後の10~14日には「3日間で1,401.11円安」を強いられ、上昇分は帳消しとなった。これは、岸田首相誕生前後の2021年8~10月相場(「17日間で3,656.85円高」の直後から「14日間で3,141.23円安)のミニ版を見せられているような展開と言えようか。
シリコンバレーバンク(SVB)、シグネチャーバンクの相次ぐ破綻による直接的な影響自体は、「金融当局の迅速な対応によってシリコンバレー発の金融不安の火種は消された」(大和証券)とされる。急激な金利低下(10年債利回りが2日間で3.90%→3.57%)もあって、13日の米国株は落ち着きを取り戻している。
ただし、「リスク・オフに歯止めがかかっただけでリスク・オンに転じたわけではない。疑心暗鬼ムードが底流するなか、直前まで外国人の継続買いで買われてきた日本株に逆流が生じている。足元の先物売買急増が示す通り、久しぶりに投機筋の売り姿勢が目立つ」(大手証券)とされる。
SVB破綻はリスク管理の甘さなど個別事情によるものではあるが、急激な金利上昇の副作用としてみれば、今後も様々な形で表面化してくる可能性があり、保有債の含み損問題を抱える日本の地銀にとっても対岸の火事とは言い切れない面がある。かつて、リーマン・ショックの1年以上前から表面化してきたサブプライムローン問題が「影響は限定的」で済まされてきた経緯も浮かぶ。
①メジャーSQ後はいつも… | |||||
SQ算出日 | 日経平均終値 | その後の安値 | 下落幅 | その後の高値 | 上昇幅 |
【2022年】 | |||||
6月10日 | 2万7824.29円 | 6営業日後の6月20日 | ▼2053.07円 | 6月27日 | △1278.25円 |
9月9日 | 2万8214.75円 | 12営業日後の9月29日 | ▼2040.77円 | 10月6日 | △1137.32円 |
12月9日 | 2万7901.01円 | 16営業日後の翌年1月4日 | ▼2184.15円 | 2月6日 | △1976.79円 |
とはいうものの、“火元”の米国でニューヨークダウが3日間(9~13日)2.98%安なのに対し、やはり日経平均に過剰反応の感は否めない。思えば、表①の通り直近3回連続で、先物オプションのメジャーSQ(特別清算指数)算出日直後からほぼ同じ水準での急落を繰り返しており、もともと転機が生じやすいタイミングだったとも言える。また、年明け以降の信託銀行の売り姿勢などにも表れている通り、年度末を前にした3月半ばはいったん法人売りで需給悪化しやすい時期でもある。例えば、昨年や20年は3月中旬に年間安値を形成しており、18年も、12月に入って下放れるまでは3月23日が安値だった。
一方で、既に急落を経たここからは明るい兆しも散見されつつある。テクニカル的には、13週、26週、52週や75日など各移動平均線に到達。1月ザラバ安値から3月ザラバ高値までの上昇幅の半値押しライン(2万7,198円)や、昨年の年中平均(全営業日の終値平均=2万7,197円)にも抵触してきた。
②3、4月の外国人売買動向に特有の傾向 | ||
年 | 3月 | 4月 |
2007年 | △123億円 | △14534億円 |
2008年 | ▼12982億円 | △8204億円 |
2009年 | ▼8835億円 | △4100億円 |
2010年 | △5427億円 | △8302億円 |
2011年 | △14034億円 | △6260億円 |
2012年 | △2425億円 | △950億円 |
2013年 | △16553億円 | △26826億円 |
2014年 | ▼5806億円 | △4243億円 |
2015年 | △5305億円 | △19953億円 |
2016年 | ▼19588億円 | △8604億円 |
2017年 | ▼10144億円 | △7555億円 |
2018年 | ▼9975億円 | △2071億円 |
2019年 | ▼15280億円 | △16055億円 |
2020年 | ▼21981億円 | ▼8096億円 |
2021年 | △4680億円 | △4056億円 |
2022年 | ▼12629億円 | △11616億円 |
そして需給。期末接近で法人売りも一巡してこようし、権利付き最終日の29日前後には1兆円を超える配当再投資の先物買い流入が見込まれる。足元で売りに転じた外国人だが、表②の通り、4月は「買い越し特異月」とも言える。実際には、配当税制絡みの“数字のマジック”的な部分も含むとはいえ、買いに転じやすい時期であることは確かだ。そしてもちろん、近年脚光を浴びる個人投資家の逆張りパワーが控える。本家・米国市場が大崩れしないことが前提ながら、ここからは下値買いが報われる可能性が高いのではないか。(K)