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インタビュー2023年10月19日

櫻井英明の<愛アール>注目企業に聞く 第5回 フェニックスバイオ(6190)

エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビュー。今回はフェニックスバイオ(6190・G)の島田卓社長。東広島にある本社で話を聞いた。

【事業概要】同社は肝臓の70%以上がヒト肝細胞に置換されたマウスである「PXBマウス」とその試験サービスを高い品質で提供している。PXBマウスは世界で最も広く利用されているヒト肝細胞キメラマウス。同社製品に対する学会発表数は2017年から22年3月まで441件。論文発表数は23年4月までに410件。ヒト肝細胞の機能と増殖能力に着目し、ヒト肝細胞の機能を維持させたまま実験動物体内で大量に増殖させる技術を開発。 ヒト肝細胞の機能を様々な用途に利用しやすく提供する新事業を展開している。

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――PXBマウスについて教えてください。

PXBマウスは、マウス肝臓に含まれる肝細胞の70%以上がヒト肝細胞で置換されたマウスとして日本、米国、カナダ、欧州、中国などで商標登録(PXBマウスおよびPXB-Mouse)されています。

当社では、04年にPXBマウスの生産を開始。年間総生産数は毎年増加しており、現在は、毎月300匹前後のペースで、年間4,000匹以上のPXBマウスをコンスタントに生産しています。また、PXBマウスの生産に用いるヒト肝細胞として、単一ドナーから得られた肝細胞を大量に購入して凍結保管していますので、生産を継続することが可能です。

PXBマウスの特徴は、マウスの生命維持に不可欠な器官の一つである肝臓において、異種であるヒトの肝細胞がマウス本来の肝細胞と70%以上入れ替わった状態を維持しつつ、実験動物として利用可能であることです。PXBマウスの肝臓の中にあるヒト肝細胞は、ヒト体内にある状態に極めて近いことを裏付けるデータが得られていますので、PXBマウスを利用することによって、ヒト肝細胞に関連する様々な実験を、同じドナーの肝細胞を持つPXBマウスを用いて繰り返し実施することが可能です。

――NASHモデルとは?

NASHとは非アルコール性脂肪性肝炎であり、アルコールを摂取していないにもかかわらず脂肪肝(肝臓に中性脂肪が蓄積された状態)になり、重症化して肝臓に炎症が起こる疾病です。さらにNASHは、肝硬変、肝がんへと進行する可能性があります。

現在、多くの製薬企業でNASHの治療薬が開発されていますが、当社のPXBマウスをもとに開発したNASHモデルはヒトの肝細胞を有しておりヒト特異的な病態を再現しているため、ヒトのNASH病態を示す肝細胞に効果のある医薬品の開発に寄与できるものと考えています。

医薬品の開発は、技術革新によって従来の「タンパク質」を標的とした低分子医薬から、ヒトの「DNA」や「RNA」を標的とした、より有効性と安全性が高い次世代医薬へとシフトしています。PXBマウスはヒトのDNAを持つため、次世代医薬品の評価が可能です。

櫻井英明(さくらい・えいめい)氏
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評がある。ラジオNIKKEI火曜「ザ・マネー 櫻井英明のかぶてつ」出演中。

――海外展開の比率が高いですね。

主要市場である北米に営業、生産および研究開発の拠点を構えています。またCRO(受託試験実施機関)との業務提携も推進しています。 次世代医薬品(核酸医薬品)は米国市場で2035年に約1兆4,800億円に達する見通しですから重要な拠点です。

――今後の展開について教えてください。

多くの可能性を追求していきますが、次世代医薬品(核酸医療分野)や農薬の安全性評価、また生活習慣病やNASHなどの分野に注力していきたいと考えています。21世紀は生命科学の時代。「高度生命科学で新時代を拓く」を追い求めていきたいと考えています。