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インタビュー2024年9月12日

櫻井英明の<愛アール>注目企業に聞く 第7回 クオリプス

エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビュー。今回はクオリプス(4894・G)の草薙尊之社長。日本橋にある本社にてお話を伺った。

【事業概要】
同社はiPS細胞を使った世界初のヒトiPS細胞由来の心筋細胞シート(以下、心筋シート)をはじめ様々な細胞製品の研究開発・製造を行っている。大阪大学・第一三共社との共同研究を通じて、心筋細胞の製造また独自に他の臓器を対象とした創薬の研究開発も行っている。iPS細胞関連製品の製品化における世界のトップランナーを目指している。イタリア語の「CUORE(心臓)」+人工多能性細胞のiPS=クオリプスという社名だ。最近放送された医療ドラマでは「健康な心臓は美しい」というセリフが登場したが、まさに「美しく健康な心臓」が同社の希望だ。
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――心筋シートとは。
心筋シートはiPS細胞から心筋細胞への分化誘導を経て、大量培養およびシート化などの独自技術を用いて製造します。現在の内科的および外科的な治療では治癒しない重症心不全の治療を目的とした再生医療等製品です。心筋シートを虚血性心筋の表面に貼付することで、豊富なサイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)が心筋内に放出され、血管新生により、血流が改善し、ひいては心筋機能が改善することが期待できます。簡単に言えば「血の巡りを良くすることで、傷んでいた心筋がもとのように復活するという仕組みです。日本・米国共に虚血性心疾患は死因第1位ですし、世界でも増加傾向ですから、患者さんはこの医療の完成を待ち望んでいます。侵襲性が低く、タイムリーな提供が可能、医療機関に細胞加工施設が不要であるなど多くの優位性があり、治療の実現可能性は格段に向上すると考えています。

――他の研究開発について。
カテーテル治療法では朝日インテックさんと共同開発契約を締結しました。また体内再生因子誘導剤は生物が本来有する自然治癒力を誘導することで組織・臓器の再生を誘導することが期待されます。また2023年12月に「クオリプスヘルスケアサイエンス(株)を設立。細胞培養後の培養液を有効活用する取り組みを開始しました。また、CDMO(医薬品開発製造受託)は主としてベンチャー企業の非臨床・臨床製品を中心に製造受託しています。

――海外について。
米国では経済産業省がシリコンバレーに開設した「ジャパン・イノベーション・キャンパル」に入居しました。同拠点をベースに米国でのビジネスチャンスの獲得に注力しています。日本発のiPS細胞による治療を実用化させる使命を持って米国に進出しました。中近東や東南アジアでのパートナー探索も継続しており、海外展開は加速させたいと考えています。

櫻井英明(さくらい・えいめい)氏
最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評がある。ラジオNIKKEIでは火曜「ザ・マネー 櫻井英明のかぶとびら」、木曜「櫻井英明のシン投資知識研究所」などに出演。

――コンソーシアム構想について。
次世代モダリティ開発を促進するための細胞大量製造システムの共同開発を開始しました。これは技術・ノウハウ・知見を呼び込み、そのバリューチェーン構築を促進するオープンイノベーションです。今後の商業化および海外展開を見据えますと、「大量製造」というのが課題になってきます。細胞の大量製造装置やシステムがないというのが現状です。継続的な循環開発による大量製造技術をリードしていきたいと考えています。

――今後の展開について。
心筋シートの開発は順調に推移。治験対象者8症例の長期間のデータを解析中で最速で25年には条件付き承認取得を目指しています。またDCM(拡張型心疾患)については逐次進めていく方向です。カテーテルは大動物への実験を進め、25年は治験の開始を行いたいと考えています。培養上清ではクリニックや化粧品会社に提供する製品を開発中です。このように製品ポートフォリオの拡充により、「夢」を追うだけでなく「現実」を直視し、多角化事業にも取り組むことで「早期の黒字化」を目指していきます。そうすることで、投資家さんの支持も得られ、多くの人に当社のファンとなっていただき、さらに「夢の早期具体化と黒字化という現実の具現化」の達成こそ、新技術の完成への近道だと考えています。