エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビューする本企画。今回はPCIホールディングス(3918)の天野豊美代表取締役会長。自動車向けなど日本のものづくり企業を支える「組込みソフト」開発が主力。あらゆるものがインターネットでつながることを支えるほか、半導体メーカー向けに開発支援も手掛けるなど対応領域は広い。
――右肩上がりの成長が続いています。
2015年の上場来、売上高は3.2倍になりました。業容は毎年、間違いなく拡大しています。今23年9月期も、第3四半期時点の通期予想に対する進捗率は売上高で70.6%、営業利益は71.6%。下期にやや偏重する収益構造ですから、現在は、期末に向けて最後の追い込みをかけているところです。
「いち早く変化を捉えて行動してきたこと」が成長につながっているのだと思いますが、株式市場にはまだまだ当社の全貌が評価されていないと感じています。
――評価されていない「全貌」とは?
先ごろ新中期経営計画「PCI-VISION2026」を発表しました。ソフトウェア開発から半導体の設計・テストなどの受託、AI画像解析システムまでを手掛ける会社で、(1)PCIブランドの再構築による競争力強化、そして(2)人的資本経営の再構築、(3)サステナブルな成長の追求(4)資本効率の最大化――を基本戦略とし、さらに10年後を見据えた「長期ビジョン」として「モビリティ」や「人財教育」といった従来の強みを活かしつつ、「総合技術コンサルティング企業」という新たなブランドを構築する方向です。
ブランドにはずっとこだわりを持っています。2020年にはパソコンを日本で初めて製造したソードを子会社化するなど、「尖った」技術を有する当社のフィールドとポテンシャルは、まだまだ大きい。
――「尖る」が成長のキーワードになりそうです。
変化の激しい、言い換えれば大きな成長性を秘めたIT業界で生き残り、顧客に喜ばれる技術を提供するためには、尖った事業・尖った人財の育成といったところに注力すべきと考えています。現在の延長線上に未来を描くことは簡単ですが、それでは「尖る」ことは難しいでしょう。
――具体的に、何を?
あらゆる分野の「崖」を超えて大きく邁進するような事業展開が必要です。そのための投資としてR&D(先端領域)へ15億円、人的資本5億円、そしてM&A関連に25億円という戦略を次期中期経営計画で掲げています。
例えば当社は国内最大級の半導体商社レスターホールディングス(3156・P)と資本業務提携を締結しています。同社とのシナジーをさらに追求していけば、IoT/IoEソリューションやAIなどの領域での「大変身」も可能になってくるはずです。