大企業が“惚れる”ビジネスモデルを佐渡島社長が解説
9月29日にIPO(新規上場)したセーフィー(4375・東マ)に注目したい。先ごろ通期業績予想を上方修正したものの「一部商流で解約が進んだ」として課金カメラ台数の目標値を15万台から14万台に引き下げた。これが嫌気されて、足元の株価は2,200円台と公募価格2,430円を割り込んでいる。この先の“浮上”はあるのか? 検証を兼ねて10月1日に行った佐渡島隆平代表取締役社長CEOへのインタビューを掲載する。
セーフィーは監視カメラなどのハードウエアを起点にした、映像をクラウドで管理するプラットフォーム「Safie(セーフィー)」の開発・運営会社。2014年に創業。17年にはオリックス、関西電力、キヤノンマーケティングジャパンなど事業会社大手5社と資本業務提携、その後もNTT、三井不動産、セコムなどとネットワークを着実に広げている。
――大手がそろってセーフィーのカメラを選ぶ、理由は?
大量のデータを「安全」かつ「安定的」に、さらには「簡易」に扱える仕組みをクラウド上に構築、これを「共有」したことが強み。ここまで大規模なプラットフォームは世界でもほかにない。監視カメラなど映像を自社事業として持つグローバル企業にとってもミッシングピース(欠落箇所)だった領域で、ここを埋めた当社の価値をご理解いただいたパートナー企業はもちろん、パートナー企業が抱えるお客さまにも「Safieっていいね」と感じていただいている。結果パートナーが増えるといった好循環で一気にシェアを広げてきた。
――世界でも類似企業は存在しない、とのこと。
監視カメラを手掛ける企業はメーンのカメラだけはしっかり作るものの、これをコントロールするソフトウエアへの意識は低い。導入する側、あるいは運用者がセキュリティなどに対応しなければならなかった。そこで当社はカメラの中に入れるOSを開発、もちろんセキュリティまで担保した状態でカメラメーカーに一斉に配布することで、メーカーが、当社のプラットフォームに相乗りするだけで高品質なサービスをフルセット販売できるという新たなツールを用意したところ、多くの企業が「味方」に変わった。クラウドなので運用に必要なのはスマートフォンなどの映像を確認する端末とWi-Fiなどの通信のみ、誰もが簡単にすぐに使えることから、小売や外食の店舗と本部を結ぶといったような使われ方をされることが多い。
――「敵を味方に変える」で面をとった。次の戦略は?
面はまだ広がる。9月にようやくデジタル庁が発足するなど日本におけるデータ活用の立ち上がりはこれから。まずは建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)をSafieが盛り上げることを確信している。文字入力を自動化するといったレベルではなく、当社のDXは「目×クラウド」。人間の「見る・聞く・記憶する・喋る・考える」をAIが代わりに行う。建設現場では防犯のためにカメラが1、2台置かれているといった今の状況から、例えば50台ほど置いて状況把握・機器操作を遠隔から行う、すべての工程をデジタル化することも可能と考える。
――5Gの本格始動で景色が激変しそうだ。
当社のビジョン「映像から未来をつくる」、具体的には、人間の意思決定をSafieの映像が支えるいう世界観は2030年とみている。
――21年12月期は赤字を計画している。
売上高は前期比59%増の計画(取材時点、その後65%増に引き上げ)だが、先行投資のため赤字に。しかし上場直前、上期では黒字化を達成している。まずは成長のために今回のIPOで調達した約100億円などをしっかりプラットフォームに投入していく。そもそも当社はカメラという「設備」を扱っているため一気に解約されることは想定しづらく、また、毎月定額をお支払いいただくという非常に強固なビジネスモデルでもある。ちなみにリカーリング(継続)収益は19年の11億円から21年末には56億円と5倍に。Safieが社会に求められている証だ。パートナー企業にめぐまれた当社にとって、株主の皆さんも「仲間」。当社と一緒に未来を作っていただければ。