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トップ記事2025年4月10日

相場激変!! 波乱的中の“当たり屋”に聞く SMBC日興証券 吉野豊チーフテクニカルアナリスト

またまたトランプ大統領の“大どんでん返し”…。発動したばかりの相互関税の上乗せ部分を(中国などを除いて)「3カ月間の一時停止」と発表し、9日のニューヨークダウは過去最大の上昇幅(2,962.86ドル高)。これを受けた10日の日経平均も過去2番目の上げ幅(2,894.97円高)を記録し、一時は2,925.36円高まで買われた。とにかくサプライズ続きで右往左往の続く株式市場だが、米国株主導でのこれまでの急落展開を昨年暮れ時点でほぼ正確に予想していたのがSMBC日興証券の吉野豊チーフテクニカルアナリスト(写真)だ。12月20日付レポートで、ニューヨークダウは「1月20日ごろまでに天井を打ち、その後は2022年以来の値幅を伴った大規模な調整が生じる可能性は小さくない」とし(1月30日最高値形成後に崩れた)、同時に予想したドル安や金大幅高などもおおむね的中。数少ない“当たり屋”となった吉野氏に、米国株急落を唱えた根拠や10日急反発を踏まえた今後の見通しなどを聞いた。

――昨年末に米国株安を“予見”した背景は。

「①S&P500の240カ月(20年)移動平均線からの上方カイ離率が150%を超え、過去3度目となる過熱状態②株式益回りが長期金利を下回った割高感。そしてそれ以上に、③SOX(半導体株指数)が昨年7月にピークアウトする一方でS&P500が上がり続け、両者のダイバージェンス(逆行)が進んだことが挙げられる。エヌビディアは9割増収の好決算発表さえ好感されず、他のマグニフィセント7銘柄で押し上げられたいびつな相場展開にモメンタムの衰えを感じていた。当初は『そんなに下げるはずがない』とお叱りを受けたものだ」

――日本株は。

「年末時点では『春先まで下値固めが続き、年央以降に再浮上』とみていたが、正直ここまで下げるとは予想しなかった。40年の上昇サイクルを経て再びインフレの時代に入った米国株と、長らくの低迷からデフレ脱却した日本株では長期的な立ち位置が全く違う」

――日経平均も昨年末から7日安値まで20.9%安となったが…。

「景気拡大が続く局面では、下落率が2割を超えてもせいぜい3割程度で止まるものだが、昭和のブラックマンデー(1987年)など過去4例では、戻り売りをこなして下げ分を埋めるのに最短半年、長引けば2年程度を要した。日経平均が昨夏安値をわずかに割り込んだのに対してTOPIXは踏みとどまったため、年末4万円近辺まで戻す可能性はあるが、当初想定していた最高値更新は先送りされそうだ」

――10日の急反騰で底を打ったと言えるのか。

「7日終値からの上げが『2,370円幅(昨年10~12月の上げ幅に相当)』を超えたため、7日終値3万1,136円で底を打った可能性が高い。昨年7月最高値からリーマン・ショック前後(07~09年)の下げ幅1万1,207円を引いた『3万1,017円』という“重要なフシ目”を割らなければ、ボトムから8,800円幅(昨年8月安値→昨年末)の上昇が期待でき、4万円弱の水準が射程に入る。ただし、当面の反発は4,660円幅(昨年9~12月の上げ幅)程度までで、買い一巡後は再び大きく押し戻される場面もありそうだ」

――8日付で半導体関連株底打ちを唱えるレポートを発行されたが。

「実は昨春から『半導体関連から内需株へのシフト』を勧めてきた。デフレ下で日本経済を支えたグローバル企業よりも内需拡大に恩恵を受ける金融や不動産が期待できるという見方は変わっていない。ただし、急落後の修復相場はより売られたものほどよく戻る。指数の動きに負けないため、あるいはリバウンドを狙うならこのセクターだ」

――円高が気になる。

「現在の経済環境は通商摩擦に揺れた1980年代後半にかけてとよく似ている。トランプ大統領は円安を許容せず、波動上からも1ドル=137円程度まで円高が進んでも不思議はないが、既に『円高=株安』の相関性は薄れている。昨夏の急落を境に個別銘柄の主役が内需株に交代したことが大きい。交易条件悪化をもたらす円安はポジティブ視されなくなってきた。そもそも近年の円安で『ドル建て日経平均』が停滞し、昨年の外国人大量売りを招いた面がある。今後はドル建てでも上昇するとみており、高水準の自社株買いに加えて外国人も買いに転じれば日本株の需給環境は相当良くなりそうだ」

――誠に失礼ながら、トランプ大統領1人の気まぐれに振り回される現状で、そもそもテクニカル分析は有効なのか。

「有効だと考える。株価は経済、政治も含めた森羅万象を織り込んで形成されるものだ。実際、第1期トランプ政権誕生の2016年も『想定外』が多発したが、チャートを頼りに25年のアナリスト人生で最も正確な予想を提供できた。相互関税導入発表で通常のファンダメンタルズ分析が機能しにくくなってから、ヘッジファンドなどの問い合わせも相次いでいる」(K)

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