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トップ記事2024年9月9日

米雇用統計 やはり鬼門? 7月に続き、8月も急落劇

二番底形成に向け準備 9月の高配当、内需系ディフェンシブなど

日経平均(日足)

米国の雇用統計は日本株にとってやはり鬼門なのか。9日の東京株式市場では日経平均株価が一時、前日比1,143.60円(3.1%)安の3万5,247.87円まで売られ、約1カ月ぶりの安値水準に沈む場面があった。朝方の売り一巡後は買い戻しが進み、終値は同175.72円安の3万6,215.75円だった。

6日、米国の景気や今後の利下げペースを占う重要指標である8月の雇用統計が発表された。非農業部門の雇用者数が前月比14.2万人の増加と市場予想の16.1万人を下回ったうえ、6月と7月分も下方修正された。失業率は予想と同じ4.2%(7月は4.3%)だったが、全般に雇用拡大のペースが鈍化していると受け止められた。10年債の利回りは3.6%台まで低下したが、株式市場では売りが先行、NYダウが410ドル安、ナスダック総合指数は同2・55%安となった。AI関連の半導体を手掛けるブロードコムが決算を発表、8~10月期の予想が市場予想を下回り、10%超の急落となったこともハイテク株に逆風となった。東京市場では東京エレクトロン(8035・P)ディスコ(6146・P)などが年初来安値を更新した。

8月5日に日経平均が4,451円安と歴代1位の下げ幅を記録したきっかけも米雇用統計だった。このときは、7月の非農業部門雇用者数が事前予想を下回ったうえ、失業率の上昇により、米国景気が後退期入りするという経験則「サーム・ルール」に到達したことなどが先行きへの懸念を強めた。

こうした流れを踏まえると、しばらくは米国の経済指標や政治イベントに敏感な地合いが続きそうだ。10日にはABCテレビ主催による大統領候補者討論会が行われるほか、11日は8月のCPI(消費者物価指)が発表される。

衆院解散なら株高のアノマリーも

一方、円高が輸出関連企業の業績圧迫要因になるとの懸念はあるが、値上げの浸透などもあり脱デフレの流れのなかで、日本企業の業績は底堅い。4日の日経平均1,600円安に続き、週明け9日の急落により、ここから2番底形成に向けた動きが本格化すると予想される。個別では26日の権利付き最終日に向け、高配当利回り、連続増配など配当妙味の大きな銘柄の押し目を拾うチャンスとなるほか、陸運、小売り、トイレタリー(関連記事)など、内需系ディフェンシブ銘柄などを押さえておきたい。

また、日本でも政治イベントが控えている。9月27日に自民党総裁選の投開票が行われる。総裁候補がはっきりと見えているわけではないが、だれが新総裁=新首相になったとしても、新政権の発足に向け解散総選挙に進むとの見方が優勢になっている。

過去の衆院選挙と株価の関係を見ると、解散日から投票日までは株価が上昇する傾向が強いことが知られている。戦後の東証再開後、過去25回の衆院選挙では20回で日経平均が上昇(平均2.5%)、90年以降の11回では10回、平均で3.3%の上昇となっている。日本企業の底力と新政権による新たな政策に期待して、急落場面でも冷静に行動したい。(M)

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