勝本竜二代表取締役社長CEOに聞く<前編>
保険業界のデジタル化を推進
「企業と個人投資家をつなぐ、分かりやすいIR(投資家向け広報)の実現」を目指し、各種メディアで発信を続ける経済アナリストの馬渕磨理子氏。今回は業界唯一のワンストップ型「保険分析・検索システム」を活用した来店型保険ショップを展開するアイリックコーポレーション(7325・東マ)を掘り下げるべく、勝本竜二代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。
――保険業界は古くて伝統的な産業というイメージがあるが、御社はフィンテックやDX(デジタルトランスフォーメーション)など先進的なワードを掲げている。
「自社の保険商品しか提案できない一社専属販売という形態を100年以上にわたって貫き通してきた業界。そのため、自社の商品を売るためのシステム化やデジタル化は一定程度進んでいるが、他社の商品と比較して売るということに関してはまったく手を付けてこなかった。しかし、業界の変遷とともに乗合代理店(複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店)と呼ばれる新しい業態が加わるようになったことで、各商品の詳細や料金を横並びで比較し、最適な商品を提案する仕組みが必要と考えた。これをシステム化できているのは当社だけ」
――事業内容と強みを教えてほしい。
「3本の柱があることが強み。まず核となっているのが保険販売事業。来店型保険ショップ『保険クリニック』を全国に展開している。2つ目は保険クリニックをFC(フランチャイズ)展開するソリューション事業。直営店52店舗に対し、FCは200店舗とかなり多い。また、ソリューション事業の中には当社のシステムを金融機関などに提供するAS部門というものがある。ここでは当社のシステムを活用し、生命保険会社に他社の商品情報を理解してもらうようなサービスも行っている。3つ目はシステム事業。最近は特にOCR(光学的文字認識)に力を入れている」
――前2021年6月期決算の総括を伺いたい。
「Withコロナで苦戦を強いられた1年だった。それでも第3四半期まではしっかりした結果を残せたと思うが、第4四半期は感染第4波による人流激減が保険販売事業に影響を及ぼし、通期の計画値はわずかに未達となった。一方で、コロナをきっかけに保険に対する関心度は高まっている。保険販売事業のKPI(重要業績評価指標)である直営店成約率は過去最高を記録した」
――直営店、FCともに店舗数が伸びている。
「コロナが長引き、良い立地条件の物件が空きだしたことが理由の1つ。4~9月までの半年間で直営店舗数は約2割増加した。FC店舗は異業種からの参入が増えている。例えば2030年のガソリン車規制で存続が危ぶまれるガソリンスタンド、政府による料金値下げの影響を受ける携帯ショップなどが、新たな事業戦略として保険ショップに乗り出すというケースが増えてきた。こうした事業者はもともと資本力もあり、出店意欲はかなり強い。CMを打つと必ずFC募集に関する問い合わせがある。FC展開は手数料収入や月額利用料が積みあがっていくビジネスのため、店舗数の増加とともに収益力が上がっていく」
――今22年6月期は売上高55億6,400万円、営業利益は5億5,000万円と過去最高を予想している。
「これまでのWithコロナから、アフターコロナ時代に向けての準備をしっかり進めることが大事。上期は店舗数の拡大を強化し、より多くの人が保険ショップを利用できる体制を作る。そして下期にTVCMなどのブランディング施策を行っていく」
(後編は10月8日付に掲載予定。独自開発した「スマートOCR」など、事業の詳細を聞きます。)