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インタビュー2021年7月15日

経済アナリスト 馬渕 磨理子が聞く!!<前編> 注目企業トップが語るサブスクリプションの“今”

新規参入続々も“明暗”くっきり

コロナ禍で人々の移動が制限された結果、EC(電子商取引)、とりわけサブスクリプションが活況だ。株式市場では関連銘柄が選好されている。しかしながら「サブスク」の中身は千差万別。この先も伸び続ける“真に強い”サブスクの共通点を、経済アナリスト馬渕磨理子氏が探る「特別対談」。サブスクの“けん引役”として注目されているテモナ(3985)の佐川隼人代表取締役社長、Macbee Planet(マクビー、7095・東マ)の小嶋雄介代表取締役社長、マクビーの子会社Smashの石山真也代表取締役CFOの3人に聞く。

馬渕氏 サブスク参入企業が急増しているが“明暗くっきり”といった状況だ。その背景を聞きたい。まずは自己紹介を兼ねてテモナの佐川社長から。

佐川氏 2008年設立、17年にマザーズに新規上場。もともとはシステム開発事業者で私自身もエンジニア出身。サブスクという言葉が日本で浸透してない黎明(れいめい)期からシステムなどハードと、物流支援といったノウハウ、必要なものすべてをパッケージにした「サブスクストア」というSaaS(クラウドで提供)のサービスを提供している。

小嶋氏 マクビープラネットは15年設立、昨年マザーズに新規上場。データを活用したマーケティング分析サービスを提供していて、特徴は「成果報酬型」。クライアント企業の売り上げ拡大に貢献している。50人ほどいる社員の10~15人は技術者と、テクノロジーの活用力の高さも強み。

石山氏 マクビーのリテンションマーケティング事業が今年3月にスピンアウトして誕生したのがSmash。長期にわたって商品やサービスをご利用いただくために利用者と良好な関係を維持(リテンション)するためのツールとして「解約抑止チャットボット」を開発・運営している。顧客企業のウェブサイトに置き、解約理由など把握してサービス改善に生かしたり、誤解を解いて解約をとどまってもらう。

馬渕氏 なぜコロナ禍でサブスクが注目を浴びているのか。

佐川氏 飲食、旅行、イベントなどありとあらゆる領域の企業がコロナ禍で「生きていけない」とEC・サブスクになだれ込んだ。しかし1年経った今、うまくいったところと、うまくいかず撤退するところが出てきている。

小嶋氏 当社の顧客にとってコロナ禍は割と“追い風”。オフラインで予算が使いずらい中、競争に勝つためデジタルマーケティングに力を入れていこうという会社は非常に多い。ただ、一般消費者のウェブ利用が拡大している以上に、サブスク新規参入者が多いような気がする。

石山氏 サブスクは1兆円超といわれる大きな市場だが、解約率については10%、20%と増えている状態。消費者からすると利用しやすい分、解約もしやすい、という状態だ。この先は新規利用者の獲得が頭打ちになり、代わりに、既存の利用者に長く使ってもらうことに意識が向かうはず。当社の解約抑止チャットボットへの問い合わせも増えている。

小嶋氏 自分はいち消費者としてサブスクやECでモノを即購入してしまうのだが、飽きやすく、2、3カ月後に解約することがよくある。しかし、これまで一度も解約ページで引き止められたことがない。

佐川氏 自分もコロナ禍で動画アプリなど利用しているサブスクのサービスは以前の倍ぐらいになった。選択肢が広がっった一方で、しっかりサービス設計がされていないと満足感を得られず、すぐに解約してしまう。新車や家などの高額商品については“いかに契約をとるか”がゴールになりがちだが、サブスクは“いかに長く使ってもらうか”というビジネス。顧客が満足し続けている状態にないとLTV(Life Time Value、顧客生涯価値、企業がある顧客から生涯にわたって得られる利益)は伸びない。契約がゴールのいわゆる“刈り取り型”から、サービスを購入して得られる体験型、これに満足し続けられる持続型へとサブスク・EC業界はシフトしつつある。

<後編は7月30日付に掲載予定>